2017/07/06
ビッグデータ業界のキーパーソンにお話をうかがう「ビッグデータマガジン・インタビュー」。
100ヵ国以上30,000社以上の企業で使用され、96%という顧客満足度を誇っているBIプラットフォーム「QlikView」。今回は「QlikView」を開発したQlikTech Inc. の日本法人、クリックテック・ジャパン株式会社 安部知雄さまと小澤宏さまにお話しをうかがい、前編と後編の2回に分けてご紹介いたします。
―――まずは自己紹介をお願いします。
安部知雄さま(マーケティング本部 本部長)
大学卒業後、神戸製鋼で輸出営業を担当していました。当時、海外企業と仕事をして感じたのは、日本企業はマーケティングが弱いということでした。2000年にIBM系列のマーケティングエージェンシーに転身しました。業務の中でクリックテックの日本市場立ち上げプロジェクトに参画していたのですが、連想技術などQlikViewのコアエンジンに大きな可能性を感じていました。その後デルで働いていましたが、2010年にQlikTech Inc.が日本法人を設立したのを機に、クリックテック・ジャパンに入社しました。当社ではマーケティングを担当しております。
小澤宏さま(ソリューション・コンサルティング本部 本部長)
大学卒業後に、日系のSIerに入社しました。そこでは技術者としてERPのインプリメント(実装)やアドオン開発をしていました。後にCRMも手がけ、プリセールス(技術視点での営業サポート)を担当しました。その後BusinessObjects(フランスのBI開発会社)に転職し、SAPに買収された後もしばらく勤めていました。ERPに携わっていた当初BIはERPにレポーティング機能として包含されていることが多かったですが、徐々にBI単体としての認知度が広まり、ニーズも高まるようになりました。2009年ころからQlikViewをコンペ製品として研究し始めたのですが、簡単にデータを可視化してビジネス活用できるQlikViewに魅力を感じ、2009年にクリックテックに入社しました。
現在は、QlikViewの技術支援や導入支援などを行っています。
―――御社の事業について簡単に教えていただけますか?
スウェーデンのルンドという学園都市で研究者たちが、データの構造を工夫し、それをメモリー上で高速に扱える技術を開発しました。その機能と処理スピード、ビジュアルの工夫から、人の連想を促進させるということで「連想技術」と呼んでいます。
(連想技術の詳細説明は本記事文末にて動画でご紹介しております)
カラム指向のデータとデータ同士の関連性(ポインター)をメモリー上に持つことで、事前の処理定義なしにデータ分析を高速処理できるこの技術は、ワールドワイドで特許を取得しております。現在、本社はアメリカ・ペンシルバニアですが、開発拠点は今もスウェーデン・ルンドにあります。
<沿革>
2007年 QlikView日本へのローカライズ&顧客開拓開始
2009年 販売開始
2010年 QlikTech Inc.がNASDAQ上場/日本法人設立
当社はパートナーを通じてQlikViewを提供しています。パートナー企業は以下をご参照ください。
http://www.qlikview.com/jp/partners/find-a-partner
―――QlikViewについて、教えて下さい。
BIをどう活用しているか?ということを調べると、日本企業ではデータを帳票やエクセル、CSVに出力するためのツールとしか使用していない、すなわち定型のレポート出力にしか活用していないという傾向がみられます。
このような活用方法をするツールがBIツールだとすると、QlikViewはBIツールではありません。QlikViewはデータもしくはビジネスを「ディスカバー(探索や発見)」するための製品です。
「QlikView」の主な特徴
1)関連項目だけでなく、関連しない項目も“見える化”
2)事前にデータ処理の定義をすることなく導入可能
3)圧縮データとポインターのインメモリ化による圧倒的なレスポンス速度
1)関連項目だけでなく、関連しない項目も“見える化”
QlikViewは、抽出条件や関連する情報だけを表示するのではなく、関連しないものも表示します。関連しない情報のセルをグレー(灰色)にして、関連性をわかりやすく表示しています。
関連しないものを一緒に表示することで、いままで気がつかなかった示唆を得られます。“関連しない”と分析者が決めつけてしまうと、その人の先入観によって、発見できたはずの示唆を見逃すことになるという思想です。
世界最大手の化粧品会社さまの事例ですが、そこのサプライチェーンの管理を担当していたKeith Carter氏は、東日本大震災の直後、日本のお客さまの被害状況を確認するため、QlikViewで「東北地区の顧客」という「地域」を指定して取引情報を参照しようとしました。その際、顧客のリストと同時に表示された「原材料の供給元」が目に入ったそうです。そして、そこからの原材料供給が止まることに気づいたのです。同時に、その供給元からの原材料を8割使用している新製品の存在にも気づき、オーストラリアで開催予定であった新商品発表を中止しました。これにより、数十億ドルの損失を防ぐことができたそうです。
分析を開始する前に意図したこととは違う点に気づき、経営に活かす。これが「連想技術」です。
2)事前にデータ処理の定義をすることなく導入可能
分析システムの構築を行う場合、ユーザー企業の要望から機能や画面設計を行い、それをもとにシステム設計をしている例が多く見られます。
しかし、QlikViewは、事前にデータマート(抽出すべき部分的データ)やキューブ(データの多次元構造モデル)を設計する必要がなく、ユーザー自身が見たい情報を簡単な操作で閲覧することができます。そのため、ユーザーは事前にIT部門へ依頼することなく、柔軟で自由な発想にもとづいてデータ分析が行えます。
特に新規事業開発やマーケティングにデータを活用する際には、さまざまな視点から試行錯誤する必要があります。しかし一般的なBIツールは、得たい結果をあらかじめ定義する必要が生じます。まだわからない新しい示唆を得るためにBIツールを活用したいのにも関わらず、事前に情報を定義すること自体が矛盾しています。
QlikViewは、データの切り口や階層構造の定義が不要で、試行錯誤しながら解を探索することができるという点で、ビジネスを「ディスカバー(探索や発見)」できるツールといえます。
例えば、小さな課題を発見した事例ですが、あるスポーツウェアメーカーでは、QlikViewを活用する中で、社内で“キャリーオーバー製品(販売期間を経過し、次シーズンに販売する商品)”と呼んでいた分類の定義が、そもそも統一されていなかったという課題を発見することができました。
ある部署ではキャリーオーバー製品を「2013年夏から2014年夏に“キャリーオーバー”した製品」と認識していたのに対し、別の部署では「2013年秋から2013年冬に“キャリーオーバー”した製品」と認識しており、同じ分類キーワードでも部署ごとに定義が異なっていました。当然ながら、この2つの部署では“キャリーオーバー”した原因も異なりますし、“キャリーオーバー製品”を削減する対策も異なるので、ナレッジの共有ができなかったのです。
このような課題は、想定していた抽出条件で抽出された売上情報を見ているだけでは発見できません。
また、もしも“キャリーオーバー”という項目を設け、対策を考えていたならば、いくら分析しても経営成果に繋げられないと思います。
3)圧縮データとポインターのインメモリ化による圧倒的なレスポンス速度
QlikViewによる分析は、圧倒的なレスポンス速度という特徴があります。下記はデータ圧縮の様子を説明したスライドです。左側が元となるデータ構造、右側が圧縮してメモリー内に保持されるデータ構造です。
QlikViewでは、同じ項目名で同じ値を持つデータは一つしか保存しません。項目ごとの関連付けをポインターとして同じメモリー内に保持しながら重複排除するため、データを5分の1から20分の1に圧縮できます。また、CPUとメモリー間のスピードだけで実行されるため、ディスクに書き込む、ディスクから読み出すというプロセスが発生せず、ディスクアクセスと比較すると圧倒的なスピードで処理が行えます。
この感覚は、実際にふれていただければ驚きに繋がると考えています。
QlikViewの価値をより多くの方に知っていただくために、すべての機能を搭載したPersonal Editionを無期限無料で配布しています。
ダウンロード:http://www.qlikview.com/jp/explore/experience/free-download
【参考:QlikViewの連想技術デモ】
http://www.youtube.com/watch?v=0MVQiz7nEPc
後編では、QlikViewをすでに導入されている企業さまの事例など、顧客満足度96%を誇るQlikViewの魅力を中心にご紹介いたします。
<後編>
100ヵ国以上30,000社以上の導入実績、顧客満足度96%BIプラットフォーム「QlikView」クリックテック・ジャパン株式会社さまインタビュー
https://bdm.dga.co.jp/?p=914
【インタビュアー】
杉浦 治(すぎうら・おさむ)
株式会社 AppGT 取締役
株式会社 学びラボ 代表取締役
一般財団法人ネットショップ能力認定機構 理事
2002年デジタルハリウッド株式会社取締役に就任。IT業界における経営スペシャリスト育成やネット事業者向け研修開発を行う。
2010年4月「ネットショップ能力認定機構」設立。ネットショップ運営能力を測る「ネットショップ検定」を主催。
2013年7月、プレステージ・インターナショナル(東証一部)より出資を受けて(株)AppGTを設立。コンタクトセンターに蓄積された顧客コミュニ ケーションデータを分析し、今後の主要な顧客接点となるスマートフォンの活用において、様々な研究や企画提案を行っている。
~ビッグデータ活用のための「やさしい業界解説」シリーズ ~
【エディター】
土本 寛子(つちもと ひろこ)
ビッグデータマガジン管理者
【経歴】モノづくりに興味を抱き、製造業向けシステム開発プログラマー、SE、業務およびシステム導入コンサルタントとして従事。また、ナレッジマネジメントやWebデザイン開発などにも関与。
~株式会社チェンジでは、「ビッグデータ無料勉強会」のほか、「データサイエンティスト養成コース(5日間)」を開催しております。お気軽にお問い合わせください。~