2017/07/06
「統計学を学びたいけれど、果たしてどの本を読めば良いのか分からない」
そんな声にお答えすべく、統計学に関するさまざまな本の中から20冊を厳選しました。
今回は、目的別に以下の4つに分類してご紹介します。
1) 統計学の超基本的なことを理解する3冊
2) 統計的な分析をビジネスで活用する6冊
3) 学問として統計学を基本からしっかり学ぶ5冊
4) 統計学の考え方、哲学、歴史を知る6冊
*本記事は「XICA-Labs データ・統計分析研究所」からの寄稿記事を、ビッグデータマガジンで一部編集してご紹介しております。
もくじ
1) 統計学の超基本的なことを理解する3冊
~まずはマンガから~
マンガでわかる統計学(オーム社)
統計学の「入り口」としては最も入りやすい一冊です。ひと通りの基本は過不足なく網羅されており、「全体像をつかむ」のにちょうどよい内容です。マンガの部分は概略を簡単に説明しているものですが、解説文をきちんと読んでいくことできちんと理解を深められるように書かれています。また、派生版として「回帰分析編」や「因子分析編」もあり、こちらもそれぞれの分析手法の「入門編」としてとても取っ付き易い内容になっています。
~数学を(なるべく)使わずに学ぶ~
完全独習統計学入門(ダイヤモンド社)
中学数学で統計学の基礎的な内容が学べる超入門書です。
筆者独自の分かりやすい言い回しで、題名の通り統計学の最低限の知識を独習できるよう工夫されています。数字アレルギーのある人にとっては、他のどのテキストよりも平易な数学で完結されているのでオススメです。
~シンプルで分かりやすい統計学入門書~
はじめての統計学(日本経済新聞社)
一歩一歩、確実な理解のために丁寧に解説されている一冊です。ある程度の数学的な説明なども交えながら、基本的な内容が幅広く書かれています。
一般的な専門書よりも易しい内容構成であり、かつ全体のボリューム感もやや抑えられています。気軽に統計学を学びたい人に最適です。
2) 統計的な分析をビジネスで活用する6冊
~現場での実務に徹底して寄り添う~
それ根拠あるの?と言わせないデータ・統計分析ができる本(日本実業出版社)
日産自動車に勤務する筆者ならではの「実務でデータや統計分析を使う」ことに焦点を当てている一冊です。
データ分析の書籍は、コンサルタントや教授などの立場で執筆しているケースが多いですが、この本は著者の現場での実体験に根ざして書かれており、扱われる事例や分析手法も、その中で「本当に意味があったもの」として書かれているため、とても納得感が高いです。
紹介されている分析手法も「回帰分析までで十分」という筆者の経験に基づいて絞りこまれています。
~実践的な統計分析だけを簡単につまみ食い~
Excel対応 90分でわかる! 日本で一番やさしい「データ分析」超入門(東洋経済新報社)
ビジネスにおける統計活用事例に応じながら、Excelですぐに出来る統計分析の簡単な手法を紹介しています。
「店舗面積から売上見込を決定できる」「最適な広告費・販促費を決定できる」など、ビジネスの現場でありそうな問題に対しての解決策として統計分析の手法が紹介されており、すぐに使える知識が欲しいという方に最適です。
~基本から応用までの手法の紹介~
Excelで経営情報を分析する ビジネス統計入門(プレジデント社)
ビジネスにおいて活用する可能性のある統計的な分析手法について、基本から応用まで幅広く取り上げられている一冊です。一つのストーリーに基づいて具体的な事例も交えて紹介されており、「この分析って何に使えるの?」ということで迷子になることのない構成になっています。
後半に取り上げられる分析手法(因子分析、主成分分析など)は応用編とも言える内容であり、やや難易度は上がりますが、統計分析がビジネスにおいてどのような可能性があるのか、ということを理解するには良い内容となっています。
~ビジネスにおけるデータ活用の基礎知識~
真実を見抜く分析力(日経BP社)
ビジネスにおいてデータ分析を活用するためのフェーズを「問題のフレーミング」、「分析手法の選択」から「結果の説明と実行」までブレイクダウンし、それぞれに丁寧な解説がされています。
フェーズごとに主に考えるべきこと、具体的なテクニック、実例のエピソード、なども詳しく書かれているため、この一冊を通じて、どのフェーズでも具体的なアクション(何を考えるべきか?何を決めるべきか?など)がイメージしやすい内容になっています。
~ビジネスにおける”分析力”とは何か?~
会社を変える分析の力(講談社)
大阪ガスにおいて長年データアナリシスに従事してきた河本薫氏が書かれた一冊です。
データ分析においてITや分析手法は手段に過ぎず、「問題を解決する」「意思決定につながる」ことで初めて価値がある、というのが筆者の一貫した主張です。その上で、分析手法や数字などはあまり登場せず、データ分析に取り組む際に求められる能力、心構え、仕事の進め方などを中心に説明しています。
~ビジネス現場での統計活用の考え方を知る~
統計思考入門(プレジデント社)
実際にデータを取り扱う現場から、統計とどのように向かい合うべきかについて書かれた指南書です。著者は市場調査・調査分析を専門とする矢野経済研究所の水越孝社長であり、簡単な統計分析であっても企業の新たな行動を促すと主張する水越社長が、本書で実用的な分析手法を分かりやすく説明してくれています。
3)学問として統計学を基本からしっかり学ぶ5冊
~統計学入門書の王道~
統計学入門(東京大学出版会)
通称「赤本」。統計学の入門書として代表的な作品の一つであり、内容は理解しやすく、かつ網羅的になっています。学術分野やビジネス書籍等、幅広い分野で推奨される良書です。
~統計学を丁寧に学習したい人向け~
基本統計学(有斐閣)
約30年前に出版されているにも関わらず、今なお重宝され続けるロングセラーです。上の『統計学入門』と比較して、公式の導入までの途中式を丁寧に書かれているという点で理解しやすく、例題が豊富にあるためより体系的な理解がしやすい内容になっています。
~人気シリーズから送り込まれた待望の一冊~
統計学(New Liveral Arts Selection)(有斐閣)
学術界で評価の高い有斐閣の「New Liveral Arts Selection」シリーズの統計学バージョンです。
さまざまな著者が議論を重ねて作り上げたこの一冊は、初歩的な統計学からより高度なレベルへと橋渡しできる網羅的な内容となっています。また、Excelを使用した演習もあるため、着実な統計の知識の習得が期待できます。
~基本的な概念からビジネスでの応用まで~
ビジネス統計学【上】【下】(ダイヤモンド社)
基本的な知識からビジネスにおける応用までが幅広く網羅されています。それぞれの章ごとに丁寧な解説とexcelを使った例題・解説が用意されています(excelは専用のホームページより全てダウンロード可能)。厚手のハードカバーが上下2冊とボリュームは多いですが、本腰を入れてビジネスに活用する統計を学ぶには最適な内容です。
~現代の潮流に則った統計学の入門書~
入門統計学(オーム社)
従来の統計学の入門書と比較し、各章を端的に解説しながら非常に網羅的な内容となっています。具体的には、記述統計学と推測統計学の話はもちろんのこと、現在汎用性の高い因子分析や実験計画法の内容に関してまで紹介されており、中身の濃い一冊となっています。
4) 統計学の考え方、哲学、歴史を知る6冊
~統計学の歴史を学ぶ~
統計学を拓いた異才たち(日本経済新聞出版社)
「紅茶にミルクを注ぐのと、ミルクに紅茶を注ぐのでは味が違う」という婦人の主張をどうやって検証することが、「実験計画法」の走りになった…? このような具体的なエピソードを交えながら、「相関と回帰」「ランダムサンプリング」「仮説検定」など、現在の統計学において当たり前に使われる様々な概念や分析手法が、どのような時代背景の中で、どのような人物が、なぜ生み出すに至ったのかが描かれています。
~哲学を考える~
統計学とは何か(筑摩書房)
統計学の先駆者の一人であるインドの統計学者・C.R.ラオ氏による統計学入門書です。
統計学の発展は、「演繹的なプロセスにより、ある不確実な場面においてリスクを最小とする最適な決定を可能にする道を拓くものであった」など、統計学の哲学的な議論がなされており、題名の通り「統計学とは何か」について本質的な答えを提供している一冊です。
~ビジネスにおけるデータの有用性を示す~
その数学が戦略を決める(文藝春秋)
統計学がいかに有用かについて豊富な事例を用いながら解説されている啓蒙書です。統計学の事例を紹介した本は他にもありますが、本書はその中でもとりわけ統計学の威力を魅力的に書いており、最初から最後まで飽きる事なく楽しみながら読めるのが最大の長所です。2007年に初版されていますが、いまなお統計学の書籍の中でもロングセラーとなっています。
~統計学の基本的な考え方を網羅する~
考える技術としての統計学(日本放送出版協会)
経済学者の飯田泰之氏ならではの、論理学的観点から見た統計学の有用性から始まる一冊です。
飯田氏曰く、論理学では根底となる「公理」という概念が非常に重要であり、その公理を採用する際の判断基準として用いるべきものが統計である、と述べられています。それ以降は、統計学の考え方について平易に解説しており、本書を読むことによって、統計学の概観を掴むことが出来ます。
~予測学のトレンドを知る~
シグナル&ノイズ(日経BP社)
2008年の米大統領選の結果をほぼ完璧に(50州中49州)当てたことで有名となった、予測学の専門家、ネイト・シルバー氏が著した一冊です。
予測学は、近年の金融危機を予測したことによって注目度が高まった学問分野であり、その予測学に関して事例を用いながら解説されています。なお、「シグナル&ノイズ」というタイトルには、、たくさんの情報に混在するシグナル(信号)とノイズ(雑音)を見分ける事は難しいが、それこそが重要であるというシルバー氏の本意が秘められています。
~ベイズ統計学の啓蒙書の決定版~
異端の統計学 ベイズ(草思社)
ベイズ統計学が歩んできた軌跡を記したこの本では、異端扱いされてきたベイズ統計学がなぜ近年着目されているかについて分かりやすく解説されています。
ベイズ統計学は、当初は主観的確率を用いる点で統計学者から支持されてきませんでした。しかし、そのような考え方は人間の本来の思考に近いと見直され、さらにはコンピュータの発達によりベイズ統計学の計算が安易でできるようになったことが追い風となり、近年になって地位を復権してきました。ベイズ統計学のテキストが増えてきている中、ベイズ統計を例示しながらわかりやすく伝えている本のひとつです。
【寄稿サイト情報】
統計解析の専門知識を必要とせず重回帰分析を行うことができる、統計分析webサービス「xica adelie (サイカ アデリー)」を開発・提供する株式会社サイカ協力のもと、ビッグデータマガジンでは統計に関する情報を同社運営サイト「XICA-Labs」より提供しております。