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【第2回】実践、AI(人工知能)をマーケティングに活かす! 〜AIは「読者の心をつかむ画像」を選定できるのか?〜

time 2016/12/20

【第2回】実践、AI(人工知能)をマーケティングに活かす! 〜AIは「読者の心をつかむ画像」を選定できるのか?〜

こんにちは、杉浦です。連載テーマ「AI(人工知能)×マーケティング」の第2回目は、「読者の心をつかむ画像の選定にAIを活用」という事例をご紹介します。

<はじめに>

本連載は、ビッグデータ活用環境の進展によって実用可能になった、人間の知性に近づこうとしているビジネス活用事例を取り上げ、非エンジニアむけに易しく解説しています。

今回のテーマは、匠の仕事「編集」の一部である「読者の心をつかむ画像選定」をAIで支援できないか?です。AI TOKYO LAB(エーアイ・トウキョウ・ラボ株式会社)の井原さんに解説していただきました。

http://www.aitokyolab.com/

(AI TOKYO LAB代表の井原さん)

 

もくじ

<①メディア運営における「画像の選定」という仕事>

「読者の心をつかむ画像」を選ぶということは、編集者やWebディレクターにとって非常に重要な仕事のひとつです。必要な「画像」をカメラマンに指示するというシーンも頻繁に見られます。高度な知識と豊富な経験がもとめられる、メディアの価値を左右する仕事です。

優秀な編集者は、読者がどんな人物か?を具体的にイメージし、どんなシーン、どんな感情でその画像を見ているかを慮(おもんぱか)り、たくさんの選択肢の中から行動を促す画像を慎重に選定しています。

 

 

<②Webメディアにおける画像ABテストの課題>

人材の能力に成果が左右されることを避けるため、Webメディアでは画像のABテストが普及しています。しかし、たくさんの選択肢がある場合はテストパターンが膨大になってしまいます。その上、「テスト対象になったユーザー」に対しては機会損失を覚悟しなければなりません。

 

<③AIは、どうやって「読者の心をつかむ画像」を選定できるようになったのか?>

有能な編集者は、下記のような手順で考えて画像を評価し、読者むけに最適なものを選定しています。

 

AIは、ディープラーニングによる「画像の評価(タグ付け)」と、属性や履歴による「ユーザーのセグメント」から、ユーザーひとり一人に対してベイズ推定による適切さの確率計算をしているのだそうです。

 

【やさしい用語解説】

<ディープラーニング>

演算ルールを多層に組み合わせた学習手法です。人間の神経回路に似たニューラルネットワークを多層化した、「たたみ込みニューラルネットワーク」などのモデルがあります。

 

<ベイズ推定>

ベイズ推定の元となっている「ベイズの定理」とは、ある事象が起こった後に目的の事象が起こる確率を算出する理論です。この方法で、「◯◯を見た人は□□をする確率が85%!」のように、次に□□する確率を推定することができます。

 

<④事例:AIによる編集チーム支援の成果>

ある大手Webメディアでの事例をご紹介します。この企業では、イベント会場などを紹介するサイトや、飲食店やサービス店舗のクーポン券などを紹介するサイトを運営しています。

そもそもの要望は「新しいコンテンツ(主に画像)をアップした際に、コンバージョン率を予測したい。」すなわち「最も高いコンバージョン率が期待できる画像をアップしたい。」というニーズでした。それまではABテストを繰り返して対応していたそうですが、作業量が膨大になり、担当者はABテストそのものが業務目的になってしまっていたそうです。

AIによる編集者支援を導入した成果は下記のとおりです。

  1. コンバージョン率が2.5倍以上になった。
    読者層に最適化された(と人が考えた)固定のWebページが、AI活用によりパーソナライズ可能になりました。リアルタイムにベイズ推定を実施してユーザーごとに適切な画像を出し分けることで、数%だったコンバージョン率が2.5倍以上にアップしました。

  2. 膨大なABテストをする必要がなくなった。
    掲載可能な画像点数が100枚あった場合、画像ABテストでは、100×99÷2=4,950通りのテストが必要になります。もしも掲載箇所が3カ所あるとと、4,950の3乗=約1,200億通りの組み合わせが考えられます。このテスト業務が不要になりました。
  3. 記号によるダグを人間むけに翻訳して、AIが撮影指示書を作った。
    AIにしか分からない記号だらけのタグを人間むけに翻訳した結果、新たに写真を撮影する際の「撮影指示書」を誰でも簡単に作成できるようになりました。

<最後に>

今回の事例でも、AI導入により「コンバージョン率が2.5倍以上」という素晴らしい成果が得られました。

しかし、編集業務のうちAIが支援できているのは、画像の選定という限られた領域だけでした。事例に挙げた企業でも、企画やコンテンツ制作など、他の広範囲な業務で人の能力が必要とされていました。

まだまだ、人とAIは手を携えて仕事をしていくことになりそうですね。

 

<協力者のご紹介>

AI TOKYO LAB & Co. http://www.aitokyolab.com/

(エーアイ・トウキョウ・ラボ株式会社)

代表取締役 井原 渉

 澪標アナリティクス株式会社 代表取締役

国立九州工業大学非常勤講師
大学在学中に外資系経営コンサルティング会社(日本法人)設立
史上最年少(当時)でプライバシーマーク審査員補資格取得
老舗中堅ゲーム会社にて分析部門の立上げにリーダーとして参画し、
離脱防止、課金促進、広告効果測定などのデータマイニング、分析体制構築を担当。

同時に大学の研究センターにおいてアクセスログに関するデータマイニングを研究。

その後、東証1部上場企業にてシニアコンサルタントとして
通信事業会社のゲームプラットフォーム等のデータ分析・KPI設定・分析用IT基盤構築の

コンサルティング部門を立上げ、主にコンサルティングや教育研修に従事。

現在、自動車や広告業、ゲーム、動画などの分析コンサルティング業務に従事。

※講演実績
九州工業大学、関西大学、AWSソリューションDAYS、オンラインゲームカンファレンス、人工知能学会共同研究会、吹田市公益活動センター等多数

 

 


【執筆者情報】

ビッグデータマガジン杉浦杉浦 治(すぎうらおさむ)

株式会社 学びラボ 代表取締役
一般財団法人ネットショップ能力認定機構 理事
株式会社 AppGT 顧問

2002年デジタルハリウッド株式会社取締役に就任。IT業界における経営スペシャリスト育成やネット事業者向け研修開発を行う。

2010年4月「ネットショップ能力認定機構」設立。ネットショップ運営能力を測る「ネットショップ検定」を主催。
2013年7月、プレステージ・インターナショナル(東証一部)より出資を受けて(株)AppGTを設立。コンタクトセンターに蓄積された顧客コミュニ ケーションデータを分析し、今後の主要な顧客接点となるスマートフォンの活用において、様々な研究や企画提案を行っている。

    

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