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【現場から学ぶ】組織(ひと)の説得で悩むビッグデータ分析の担当者へ! 〜ブラックボックスを無くしてマーケティング組織を動かす方法〜

time 2017/05/08

【現場から学ぶ】組織(ひと)の説得で悩むビッグデータ分析の担当者へ! 〜ブラックボックスを無くしてマーケティング組織を動かす方法〜

 こんにちは、杉浦です。今回は、ビッグデータ分析の活用でマーケティング成果を上げている現場から学びたいと思います。「ひとの決断を応援」し「すべてのデータに示唆を届ける」株式会社サイカのCEO平尾さんとデータ分析エンジニアの祖山さんに解説していただきました。

<はじめに>

(株)サイカについては本コラムで何度かご紹介しましたが、

今回は創業者の平尾さんから熱い「想い」を聞きくことができました。そこには、データ分析によって組織を動かすための重要なヒントがありました。

 

もくじ

①サイカ創業の想いは、統計を「分かりやすく」「説明しやすく」

 平尾さんの想いは、父親が務める某大手百貨店の倒産が原点でした。当時その百貨店は、不動産の値上がりを見込んだ借入金がふくれあがり、本業では返済できなくなっていました。

10年後、慶応SFCで統計分析を学んでいた平尾さんは、「公的金融の貸付が1%増えると、中小企業のパフォーマンスが◯◯%減る」という仲間の分析結果に驚き、「このような分析手法を経営に活用できていたら、父の会社には違う未来があったのではないか!?」と衝撃を受けたのです。

平尾さんの創業は、この想いが原動力です。「統計能力を活かして儲けたい!」ではなく、「勘や経験を徹底的に活かすための客観的な土台を、すべての経営者に提供したい!」のです。

  そのためには、担当者にとって「分かりやすく」、多くの人を説得するため「説明しやすい」必要があります。そこで、回帰分析にこだわったのです。

ビッグデータマガジンの「書籍20選~効率よく目的別に統計分析を学ぶ~」 でご紹介した書籍「マンガで学ぶ統計学」シリーズや「はじめての統計学」といった入門書にも必ず紹介され、かつ一般社会でも多く活用されてきたのが回帰分析です。

②マーケッターに寄り添った分析ツール「マゼラン」

 サイカの分析ツール「マゼラン」は、マーケッターの業務に寄り添っています。たとえば、マーケッターがよく活用するフレームワークに「カスタマージャーニー」があります。これは、顧客の購買行動を「行動」「思考」「感情」にといった視点で分析し、適切な施策を検討するための手法です。

(マーケッターが活用するカスタマージャーニーの例)
引用元:http://web-tan.forum.impressrd.jp/e/2013/11/14/16305

マーケッターは施策を講じて顧客を次のフェーズに導きます。

「マゼラン」は、「どの施策が、どの程度役立ったか?」を評価し、「どの施策が、どの程度の成果を出しそうか?」を予測します。

他の分析ツールは施策と成果の直接的な相関しか分析しませんが、「マゼラン」は重回帰分析を多段に実行して有効な施策の連鎖を発見します。「相関の連鎖を分析する」ことで、間接的な影響も評価するのです。

③重回帰分析を多段でやる大変さ

 重回帰分析を多段で実行するのは容易ではありません。説明変数と目的変数の組み合わせが膨大になってしまうからです。

サイカのツールは、テレビ露出や天気などの外部データや、時間とともに減衰していく印象データなども加味できるため、さらに変数は多くなります。

たとえば、3つのフェーズを経て購買につながるというケースで、フェーズ毎に3種類の施策を実行しているとすると、分析対象となるデータは下記のようになります。

考えうる相関チェーンのパターンには、下記のようなパターンもあれば、

下記のようなパターンも考えられます。

すべてのパターンを洗い出すことを考えると、気が遠くなりますね。

そこでサイカでは、推定ロジックとパターン比較アルゴリズムをオリジナルで開発して、すべてのパターンを最後まで計算するのではなく、推定によりパターンをある程度絞り込みつつモデルを精査することで実用化にこぎ着けたのです。

モデルを精査する際には、現場の常識にそぐわない数値を排除するため、「制約条件」を加味するアルゴリズムも加えているそうです。

 

④事例と成果

 現在のクライアントは、定量目標をもってアクセス解析をするなど、広告のCPAに敏感な会社が多いようです。これらの会社は、Cookieが使えないケースの効果測定に頭を悩まし、先行してマゼランを活用し始めたのでしょう。

下記は大手金融会社の事例です。間接施策からの顧客獲得数が30%増え、顧客あたりの獲得コストが5%低減しました。

⑤まとめ

 ビッグデータ分析で活用されるアルゴリズムには、ディープラーニングのように数式がブラックボックスになってしまうものも少なくありません。分析環境の進化によりこれらのアルゴリズムが実用されるようになり、大量のデータによって分析精度が増したのも事実です。(もちろん、人気のアルゴリズムだから精度が上がるわけではなりません。)

一方で、「ひとに分かりやすい」ことで組織を動かそうとする、というアプローチもあります。業務フローに人が多く介在する場合は、メンバーの納得感が成果に大きな影響を与えます。逆に、すでに機械化されている業務フロー(たとえば、工場内の自動作業など)はアルゴリズムの精度に比例して成果が上がります。

分析結果を活用する組織や業務などによって、分析手法を変化させることも大切ですね。

<協力者ご紹介>

平尾 喜昭(写真:左) http://xica.net/members/yoshiaki-hirao/

株式会社サイカ 
代表取締役CEO

2012年慶應義塾大学総合政策学部卒業。幼い頃から音楽に触れていた生粋のバンドマン。自身の体験から「世の中にあるどうしようもない悲しみを無くしたい」と強く思うようになる。大学在学中に統計分析と出会い、卒業直前の2012年2月に株式会社サイカを創業。

 

祖山 寿雄(写真:右) http://xica.net/members/hisao-soyama/
Data Analysis Engineer

2012年一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。ISPのネットワークエンジニア、人材系ベンチャーのWebエンジニア、医療系ベンチャーのDBエンジニアなど多業種、多職種を渡り歩いたのち2016年6月にデータ分析エンジニアとしてサイカに入社。分析アルゴリズムの設計、実装からインフラ、アジャイル、DevOpsなど技術に関することなら何でも口を出そうとする(手も動かす)。

 


【執筆者情報】

ビッグデータマガジン杉浦杉浦 治(すぎうらおさむ)

株式会社 学びラボ 代表取締役
一般財団法人ネットショップ能力認定機構 理事
株式会社 AppGT 顧問

2002年デジタルハリウッド株式会社取締役に就任。IT業界における経営スペシャリスト育成やネット事業者向け研修開発を行う。

2010年4月「ネットショップ能力認定機構」設立。ネットショップ運営能力を測る「ネットショップ検定」を主催。
2013年7月、プレステージ・インターナショナル(東証一部)より出資を受けて(株)AppGTを設立。コンタクトセンターに蓄積された顧客コミュニ ケーションデータを分析し、今後の主要な顧客接点となるスマートフォンの活用において、様々な研究や企画提案を行っている。

    

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