2017/07/06

こんにちは、ビッグデータマガジン「やさしい業界解説」シリーズ担当の杉浦です。本シリーズでは、各業界がどのようにビッグデータ分析をビジネスに役立てようとしているか?をテーマに、様々な業界のお話をさせていただきます。第3回目は非耐久財メーカーです。非耐久財とは、食品・洗剤・化粧品などを指します。
■ソーシャルリスニングで、お客さまの本当の姿を知る食品メーカー!?
2013年5月に東京ビッグサイトで開催された「Web&モバイル マーケティング EXPO」のホットリンク社のブースでは、ロッテアイス「クーリッシュ」の事例を解説していました。
これまで、メーカーは、自社の商品がどう評価されているか?を知るために、消費者にアンケート調査をしたり、グループインタビューをしたりしてきました。アンケートやインタビューの質問項目はメーカー側の仮説によって作成されていたため、クーリッシュのように仮説から外れた、新たな発見をすることは難しかったのです。最近よく聞かれるソーシャルリスニングは、新しい発見という成果を生みつつあるようです。
消費者の行動を把握するためにソーシャルメディアを分析する、というアプローチ以外にも、
- JR東日本ウォータービジネスはICカードの会員サービスで顧客の情報を把握し、新製品を開発。
- 花王は製品コンセプトが顧客に正確に伝わっているのかを TwitterやFacebookで集めたデータを用いて確認。
というように、様々な目的で非耐久財メーカーがビッグデータ分析に取り組み始めています。
■メーカーと消費者との間には、情報伝達を妨げるたくさんの壁があった!
流通業者を経由して購入されていた非耐久財は、メーカーが製造してから消費者の手に渡るまでに、たくさんの中間業者を経由しなければなりませんでした。メーカーから消費者への情報は、マスメディアを使用すればダイレクトに伝える事が可能ですが、消費者からメーカーへの情報伝達は容易ではありませんでした。
ところが、ソーシャルメディアの普及によって、今では消費者が生の声がドンドン発信され、インターネット上に溜まっているのです。この声を分析して経営に活用しようとするメーカーが増えてきました。
■メーカーの組織と役割分担の壁
社内組織間の情報共有にも課題は多く、従来は組織ごとに違ったルートから情報を入手し、それを元に施策を実施して、各々が異なる形式のデータでナレッジを溜めていました。
ビッグデータ分析の技術を活用すると、様々な形式のデータを取り扱うことも、それらを統合して分析することも可能になります。よって、組織間の情報共有にも役立つ可能性が大きいのです。
■まとめ:非耐久財メーカーがビッグデータを活用するためのヒント
最後に、ビッグデータの特徴である3つのV(Volume、Variety、Velocity)と、非耐久財メーカーにおけるビッグデータ活用の関係を整理しておきます。
- Volumeを活かそう!
全データを分析することで、様々なユーザー群(クラスタ)を発見し、商品ラインアップの拡充に活かすことが可能です。サンプルデータでは見落としてしまうようなユーザーニーズにも着目して商品ラインアップを増やすことで、市場シェアを獲得することも可能です。
- Varietyを活かそう!
広告宣伝部門や営業部門では、自社製品の売れ行きと様々なデータの相関を分析することで、顧客に訴求しやすいキャッチコピーや、売上増につながる場所・タイミングなどのヒントを得ることが出来ます。
これまで、卸会社や小売店に任せきりだった店頭販促についても、メーカー主導の販促が可能になってきました。また、食品とエンターテインメントなど、全く違った業態と連携した販促企画を検討することも出来そうです。
- Velocityを活かそう!
製造や輸送にはどうしても必要なリードタイムがあるため、製造部門や営業部門では、刻々と変化する情報を業務に活かすことが難しいかも知れません。しかしサポート部門では、今やりとりしている会話や表情などを分析して、対応方法の指示や参考事例を表示することで、業務の効率化や業務品質の向上・標準化が可能になります。
こういったノウハウをツール化して取引先に提供することで、小売りの現場で競合製品との差別化を図るといったことも考えられます。
杉浦 治(すぎうら・おさむ)
株式会社 AppGT 取締役
株式会社 学びラボ 代表取締役
一般財団法人ネットショップ能力認定機構 理事
2002年デジタルハリウッド株式会社取締役に就任。IT業界における経営スペシャリスト育成やネット事業者向け研修開発を行う。
2010年4月「ネットショップ能力認定機構」設立。ネットショップ運営能力を測る「ネットショップ検定」を主催。
2013年7月、プレステージ・インターナショナル(東証一部)より出資を受けて(株)AppGTを設立。コンタクトセンターに蓄積された顧客コミュニケーションデータを分析し、今後の主要な顧客接点となるスマートフォンの活用において、様々な研究や企画提案を行っている。
~ビッグデータ活用のための「やさしい業界解説」シリーズ ~