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ビッグデータ活用で「命を守る」情報を提供 株式会社ハレックス 代表取締役社長 越智 正昭氏 ~ビッグデータマガジン・インタビュー~

time 2013/11/12

ビッグデータ活用で「命を守る」情報を提供 株式会社ハレックス 代表取締役社長 越智 正昭氏 ~ビッグデータマガジン・インタビュー~

ビッグデータマガジン 小暮です。

ビッグデータに関わるソリューションや人物のお話を伺う「ビッグデータマガジン・インタビュー」。今回も引き続き株式会社ハレックス(以下、ハレックス)の代表取締役社長である越智 正昭氏のインタビューをお送りいたします。

 

■海上の船乗りと陸上の運航管理者に海の情報をクラウドで提供

 

–ハレックスにおける海洋気象ビジネスについて教えてください。

現在多くの海運会社では、出港後の船舶運行業務の大部分が船舶(船長)の責任に委ねられています。時々刻々と変化する天気や海の状況の中を航行する船舶の船長にとっては、目的地まで安全に航海するためにどのような針路を取ればよいのか、目的地では荷役作業が安全に実施できる天候なのかといった判断をする必要があり、気象に関する情報は極めて重要なものです。

また、陸地にある船舶会社にとっては船舶が目的地に到達するためにどのくらいの燃料が必要なのか、出港した船舶が今どこにいるのか等、安全運行を確保した上で経済運航も意識した運行管理を行う必要があります。

その一方で現在では、衛星通信技術やインターネット環境が急速に発展・普及したことにより、港内から海洋上に至るまで船舶の安全運航を確保した船舶運航管理業務を陸上から支援できるようになってきました。

ハレックスでは、海上船舶や船舶の運行管理を担う船舶会社に対してそれぞれのニーズに即した海の情報をクラウド技術を使って提供する海洋情報ASPサービス「VMS (Voyage Management Service)」を提供しています。

 

■気象・海象情報を踏まえた運行管理業務を支援

—  海洋情報ASPサービス「VMS」の概要について教えてください。

VMSでは、気象庁等から1日4回提供される全球気象データや、船舶会社が運航する各船舶の航海情報をハレックスのデータセンターにて一元管理し、船舶会社や海上船舶に気象・海象情報を提供しています。陸上の船舶会社に対してはインターネットを介して提供し、海上船舶に対しては船舶の通信事情を踏まえ衛星通信を介してメールにて情報を提供しています。

提供する情報は、お客様のニーズに合った情報を提供しています。例えば陸上の船舶会社に対しては、現在航行中の船舶の位置情報と、海洋上の気象ビッグデータ(気圧配置、波高(向)、風速(向)、台風等)や制限海域情報(軍事演習等)の予測情報を地図上にて一目で確認することができます。地図上では、強風の有無や波高の大きさ等を色で表示するため、船舶を取り巻く天気や海の状況を陸地から把握しやすくなっています。

また、画面上での簡単なマウス操作により、気象情報を踏まえた航路計画も作成できます。海上の船舶にて作成した航路計画はメール送信することで陸上の船舶会社に情報を即座に共有することが可能です。その他、運行管理に必要な情報をフォームに入力・送信するだけで航海情報レポートを作成・共有する機能もあります。

ビッグデータ 活用事例 海洋情報

図1:海洋情報ASPサービス「VMS」

 

■気象ビッグデータと航路実績をもとに安全・安心な推薦航路を提供

 

—その他の特長について教えてください。

海洋上の気象ビッグデータと船舶の位置情報をもとにして最適な航路を分析・選択し、海上船舶や陸上の運航管理者に対して推薦航路データを提供するサービスも提供しています。推薦航路データを作成する際には、「到着時間の早さ」や「航行時の燃料消費の少なさ」等といったお客様が優先させたい条件を設定することができます。作成される最適航路は最大3本まで表示されます。

また表示される推薦航路データは、過去に実際に運航された航路データの中から選択されます。そのため表示された推薦航路データは運用に耐えないような「机上の空論」ではなく現実的な航路データです。

ッグデータ 活用事例 海洋情報

図2:海洋情報ASPサービス「VMS」。気象情報と推薦航路を表示。

 

海上船舶が予定していた航路が、予め設定しておいた警戒波高や警戒風速の海域に入ることが予想される場合、72時間前から画面上でアラート表示(地図上の船舶が赤色や黄色で表示)を行うことで、海上船舶や陸上の運航管理者に対して注意を促すことができます。更に、ご希望に応じてアラート情報を登録メールアドレス宛にメール送信することもできるため、陸上の運航管理者のモニタリング業務の負荷軽減にも貢献できます。

 

—  アラート表示はなぜ「72時間前」なのでしょうか。

気象の予測は先の時間になればなるほど確度は低くなり、あくまでも可能性の予測といった感じになります。一方、直近の予測情報は波の高さや風の強さといった定量的な予測も含めて確度が高くなります。ハレックスでは、長年の経験則からその境目を72時間先と捉え、72時間先を一つの目安に情報の提供方式を変えることを行っています。加えて、気象現象に伴う災害リスクを事前に把握し、日常業務への影響を検討し、代替手段を意思決定するためにはおよそ72時間あれば十分備えることができるとも考えています。これは海象情報だけではなく、気象全般における災害リスクに対応する際にも当てはめています。

 

ッグデータ 活用事例 海洋情報

図3:海洋情報ASPサービス「VMS」。荒天時にアラート表示。

 

■船乗りと気象予報士の生きたやり取りから生まれたサービス

 

—「VMS」で表示される画面や情報を拝見すると、単に気象情報を提供するのではなく、お客様の現場業務や現場担当者の声を踏まえたサービスのように感じられました。

実はこのサービスは、ハレックスが擁する気象予報のエキスパートである気象予報士が蓄積したノウハウをもとに生まれたサービスです。これまでもハレックスでは気象予報士の手によって、世界中の海の波浪・海上風予測情報や船舶位置情報をもとに最適航路を分析・選択し、推薦航路データを船乗りに提供するサービスを行ってきました。

我々のような民間気象情報会社は、単に気象情報を提供するのではなく、気象情報を核とした課題解決型のソリューションを提供することが大切だと考えています。そのために当社では、独自のオンラインリアルタイム・ビッグデータ処理技術と、気象予報のエキスパートである気象予報士が持つ情報活用ノウハウを組み合わせたサービスを、お客様が使いやすいクラウドで提供することで、民間気象情報会社として本来あるべき姿を追求しています。

 

次回は今後の気象情報ビジネス市場におけるビッグデータ活用に関するお話をお伺いします。

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気象情報 編
・緊急地震速報 編

 


執筆者情報

ビッグデータマガジン 小暮小暮 昌史(こぐれ まさし)

所属:人材開発サービス事業部

【経歴】大学院博士課程(専攻は火山学)中退後、2007年に株式会社チェンジ入社。内部統制支援、システム移行支援、海外進出支援コンサルティング業務に従事。

 

    

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