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小売業界(店舗販売)とビッグデータ〜ビッグデータ活用のための「やさしい業界解説」シリーズ〜

time 2013/08/16

小売業界(店舗販売)とビッグデータ〜ビッグデータ活用のための「やさしい業界解説」シリーズ〜

こんにちは、ビッグデータマガジン「やさしい業界解説」シリーズ担当の杉浦です。

本シリーズでは、各業界がどのようにビッグデータ分析をビジネスに役立てようとしているか?をテーマに、様々な業界のお話をさせていただきます。第2回目は小売業界(店舗販売)です。

 

【特集記事】コンビニエンスストアが、ビッグデータ分析で競争!?

 

2013年7月24日の日経ビジネスオンラインに、「コンビニのビッグデータ活用先駆者はセブンでなくローソン」と題して、コンビニエンスストアの取り組みが紹介されていました。

 小売業界(店舗販売)とビッグデータ

その他にも、小売業の取り組みを紹介する下記のようなニュースがありました。

  • TSUTAYAを展開するCCCが、2012年4月開催の「Information On Demand Conference Japan 2012」にて「Tポイント事業における大規模データ分析事例のご紹介」と題して講演。
  •  テレビ東京が提供するワールドビジネスサテライトでは、2013年6月に「ビッグデータで消費をとらえろ!」と題して、小売業を特集。

このように、小売業がビッグデータ活用を進めている背景や目的は何なのでしょうか?

 

ネット販売の台頭により、店舗販売の顧客は奪われていった

 

お客様の行動を細かく分析して効率的にアプローチをすることは、アマゾンや楽天といったネット通販事業者が得意としています。また下記の図が示すように、様々な場面でインターネットが使われるようになってきたため、店舗販売を主軸にする小売業者は、インターネット活用が得意なネット通販事業者に顧客を奪われつつありました。

 

小売業界(店舗販売)とビッグデータ

ネットショップ検定公式テキストp35より

 

スマートフォンの普及で、店舗の逆襲が始まる!?

 

ところが、急速に普及するスマートフォンの影響により、インターネットによる情報提供やサービス提供の方法に変化が見えはじめました。 

小売業界(店舗販売)とビッグデータ

小売業界(店舗販売)とビッグデータ

(株)MM総研「スマートフォン市場規模の推移・予測(2013年3月)」より

http://www.m2ri.jp/newsreleases/main.php?id=010120130328500

 スマートフォンは外出先でも気軽に使えるため、店舗販売を中心とする小売業界にとっては、インターネットユーザーを取り込むチャンスが到来したと言えます。スマートフォンを活用すれば、顧客の購買プロセスにおいて様々な手を打つことが出来ると同時に、その施策の効果をスピーディーにきめ細かく分析することが可能になります。

 小売業界(店舗販売)とビッグデータ

 

小売業で期待される、ビッグデータ活用の施策

 

経営目標を分類してビッグデータ活用を検討すると、下記のような様々な施策例が考えられます。それぞれの施策についてデータを収集し、スピーディーに分析することで、経営改善の効果が期待できます。

 

小売業界(店舗販売)とビッグデータ

 

店舗小売業による「O to O(オンラインtoオフライン)」は成功するか?

 

最近「O to O(オー・ツー・オー)」という言葉が聞かれるようになってきました。小売業では、「O to O」を「オンライン to オフライン」と考えていて、オンラインユーザー(=ネット閲覧者)を店舗に呼び込むことができる!と期待が高まっています。

前述のとおりスマホの普及で、大いに期待できることは事実です。しかし、オンラインでの顧客コミュニケーションがしっかりできることと、オンラインと実店舗でのコミュニケーションに一貫性があることが重要になります。

 

実は、小売業の期待とは裏腹に、「O to O」は「オフライン to オンライン」も指しています。すなわち、店頭のお客様がネットに流れていく現象も指すのです。店頭で商品説明を聞き、ネットで最安値を探して購入するという「ショールーミング」という行動が増加しているようです。

結局、ネットと店舗の戦いは「どちらが顧客にとって価値が高いか? 楽しいか? 幸せか?」の勝負になるのですが、そもそも「ネット or 店舗」と分けてしまうこと自体が「顧客中心主義」とは言えないと思います。どちらからアクセスしても、お客様の体験は一貫性があって、楽しく、便利だという状態を提供できる事業者が勝つのでしょう。

この一貫性を実現するためにも、ネットで得られるデータと店舗で得られるデータを統合して分析するなど、多様なデータをお客さま視点で分析して活用できる体制が必要になります。アマゾンが実店舗を展開し、ネットでのノウハウを店舗で実現しようとする日が来るかも知れませんね。

 

 

まとめ:店舗小売業がビッグデータを活用するためのヒント

 

最後に、ビッグデータの特徴である3つのV(Volume、Variety、Velocity)と、小売業でのビッグデータ活用の関係を整理しておきます。

  • Volumeを活かそう!

全データを分析することで、ニッチなユーザー事例を発見し、そのお客様に最適化したサービスを提供することで、顧客ロイヤリティを高めることが可能です。
また、個別ユーザーの特殊事情を勘案することも可能になります。お客様をセグメントして対応するのではなく、個人個人に違った対応をすることもできるのです。

  • Varietyを活かそう!

多様なデータの活用という点では、何と言ってもO to Oの実現です。まだまだ最高のO to Oサービスを実現している企業はありません。先行して様々な試行をしていただきたいものです。
また、ソーシャルメディアやセンサー情報などの外部情報を活用して、お客様に「気が利く提案」をできるといいですね。気が利くコンシェルジュの感性を仕組み化するのです。

  • Velocityを活かそう!

店頭での接客を顧客サービスの中心に置く小売業では、その場で取得できるデータを瞬時に分析して、個別のお客様に最適なサービスを提供するという、これまで店員の能力に依存してきた業務を、システム化できるか?というチャレンジをすることになると思います。
現在でも、レジでの購入時に個別のお客様に合ったクーポンを発行するというサービスは広がっています。

 

 


osamu_sugiura

杉浦 治(すぎうら・おさむ)

株式会社 AppGT 代表取締役
株式会社 学びラボ 代表取締役
一般財団法人ネットショップ能力認定機構 理事

 

2002年デジタルハリウッド株式会社取締役に就任。IT業界における経営スペシャリスト育成やネット事業者向け研修開発を行う。
2010年4月「ネットショップ能力認定機構」設立。ネットショップ運営能力を測る「ネットショップ検定」を主催。
2013年7月、プレステージ・インターナショナル(東証一部)より出資を受けて(株)AppGTを設立。コンタクトセンターに蓄積された顧客コミュニケーションデータを分析し、今後の主要な顧客接点となるスマートフォンの活用において、様々な研究や企画提案を行っている。

    

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