2017/07/06

ビッグデータマガジン 高橋です。
読者のみなさまのおかげで、ビッグデータマガジンは、無事2014年を迎えることができました。そこで、2014年のビッグデータはどうなっていくか、今後のトレンドを大胆予想してみたいと思います。
日経BP社は、2014年の年始早々「日経ビッグデータ」を創刊することを発表しました。サブタイトルには「活用すれば勝てる時代から、取り組まないと負ける時代へ」と書かれています。まだまだ、ビッグデータの快進撃が続く予感がします。
一方、ガートナージャパン株式会社が2013年10月15日に発表した「日本におけるテクノロジのハイプ・サイクル:2013」では、流通・小売業のビッグデータ活用事例のみが先行し、個人情報の取り扱いに関する議論の余地も残ることから「『過度な期待』のピーク期」と定義されており、ピークを過ぎると「幻滅期」に突入するということになっているようです。
<参考:ガートナージャパン株式会社>
http://www.gartner.co.jp/press/html/pr20131015-01.html
ビッグデータを“過度な期待”にせず、ビジネスにおける現実的な成果や可能性を探求するソリューションとして各自が認識できるようにするためにも、2014年がどのような年になっていくのか、考えていきましょう。
トレンド1:ビッグデータは、「存在する/集める」から「作る/買う」へ
2013年、いくつかのセミナーで、「社内にあるデータに目を向けて」というトークをよく耳にしました。これからもきっと、社内データを重要視していくことに間違いないでしょうし、そのような中、すでに積極的にデータを分析している会社もあれば、そうでない会社もあるでしょう。
一方で、「社内データやそこから得られる分析結果や示唆に“過度な期待”を抱きながら見つめていても、なかなか結果につながらない…」という「分析の壁」にぶつかる事態が起きているのも事実のようです。
分析の目的や仮説を見失ったまま分析結果に期待しても、まさに「期待外れ」というのは、ビッグデータに携わったことがある人ならよくご存じのことでしょう。
そこで、目的を正しく整理していくと、「こんなデータがあるといいな」ということに気づきます。これらの「新たなデータ」を入手する動きが増えてくるでしょう。
例えば、Webサイトを使った売り上げ増加を目指すなら、自社Webサイトのアクセスログを分析しますが、これだけでは不十分です。自社Webサイトのアクセスログからわかることは、訪問者が適切にサイトを閲覧し、購入しているかどうかにとどまるからです。
そこで、Webサイトに対する評価は「競合と比較してどうか」や、「同時期に競合他社のWebサイトを訪問している人がどれくらいいるか?」という点が気になるはずです。これらのデータを入手する方法が確立されるようになってくると、Webサイトのログ分析の精度は各段に高まるはずです。
また、センサーソリューションやGPSなどを用いた「データ」収集が安価かつ容易になってきたことから、自ら検証用のデータを「作る」事例も増えてくることでしょう。
既存データだけを分析し、「ビッグデータ分析で見えるものは限られる」と幻滅するのではなく、本当に分析に必要なデータを考え、新たに取得し、分析することで、結果につなげていくという事例が増えてくるでしょう。
<参考事例>
C-Finder:今まで解析することができなかった競合サイトの状況を把握できるソリューション
http://www.consumer-first.jp/
ビッグデータマガジン C-Finderご紹介記事
https://bdm.dga.co.jp/?p=983
Cisco CMX:さまざまなWi-Fi デバイスの位置を特定、追跡し、分析できるソリューション
http://www.cisco.com/web/JP/solution/borderless/mobile_ex/index.html
トレンド2:ビッグデータ分析は、「専門家」から「より広く・より身近」に
これまでのデータ分析は、マイクロソフトのExcelやAccessなどで行うか、それより複雑な分析は、専門的なソフトを用いて専門家が扱う領域という印象がありました。ビッグデータというと、後者を想像し、まだまだ専門家の領域という認識を持つ方も多いのではないでしょうか。
しかし、株式会社チェンジのデータサイエンティスト養成講座「ベーシック編」では、「ビッグデータ利活用人材」と裾野を広げて定義し、「より広く・より身近」に分析できる人材を育成しています。
裾野を広げる上で重要になってくるのは、エクセルと高度な分析ツールの二択ではなく、その中間解とも呼べる独立系のBIソフト群です。昨年、日経コンピュータでは、超「Excel」という名称で、これらのBIソフトを取り上げていました。
どのツールも比較的安価で、導入もしやすいことから、すでに各社導入の検討を開始しており、2014年度は実際にこれらのツールを各社で導入する事例が増えてくるでしょう。
ただし、ツールによって、特徴や強みが異なるので、活用シーンや利用ユーザーの状況を鑑み、最適なツールを導入し、成果につなげていくことが大事になってきます。ビッグデータマガジンの中でも昨年特集を組み、幾つかのツールとその特徴をご紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
<バックナンバー:BIツール4選~ユーザ視点のビッグデータ活用に向けたBIツール~>
https://bdm.dga.co.jp/?p=850
トレンド3:リアルタイム分析の事例が増える
これまでビッグデータの事例と言えば、Hadoopに代表される大量なデータ(Volume)の高速処理事例や、Twitterなどの非構造化データを組み合わせた(Variety)分析事例が、数多く報告されており、読者の皆さんもきっとご存じでしょう。
これらに比べ、ビッグデータを定義する“3つのV”の残った一つ、Velocity(速さ)に関する事例、特にリアルタイム分析に関する事例は、これまであまり報告されていません。
例えば、証券取引のコンプライアンス(ユーザーと同じ銘柄の売買を行っていないかというチェック)、不正ログインやネットワーク監視などの事例など、特定領域に限ったもので、あまり公開できない、もしくは展開しにくい事例しか出てきていませんでした。
リアルタイム処理のためのソリューション導入が安くなったとはいえ、「ちょっと試してみよう」と簡単にいえる価格ではなかったこと、分析結果が必ずしも「リアルタイム」でなくてもいいだろうと判断していたこと、などがこれまで普及しなかった要因として考えられます。
そこに、昨年末、ビッグデータ業界における「価格破壊者」、Amazon Web Services(AWS)が、Amazon Kinesisというストリーニングデータのリアルタイム処理ソリューションを発表しました。
<Amazon Kinesis>
http://aws.amazon.com/jp/kinesis/
AWSはこれまでも、大容量ストレージのS3、NOSQLデータベースのAmazon DynamoDB、カラムナー型データウェアハウスのAmazon Redshiftなどを低価格で展開してきましたが、これらに加え、ストリーミングデータをリアルタイム処理するソリューションまで提供し、まさにフルラインナップにとなったといえます。
現時点では、米国東部(バージニア北部)のリージョンでの利用に限られていようですが、他ソリューション同様、低価格の従量課金制ということで、「ちょっと試してみよう」というユーザーも増えてくることでしょう。今後もさまざまな導入事例が増えてくるのではないかと期待しています。
トレンド4:「分析→示唆」から「機械学習による意思決定/行動支援」へ
よくユーザー企業で聞かれるビッグデータの分析に対する“過度な期待”のひとつに、「なにか今までに気づかなかった隠れたルールや法則を見つけたい」というものがあります。
このような期待を生み出すきっかけのひとつになっているのは、機械が大量のデータを分析し、自動的に隠れた法則を生み出すといわれる「機械学習」がビッグデータソリューションに含まれているからでしょう。
トレンド2にも書いた通り、分析が身近になってきた一方で、ここ数年、ビッグデータの専門家や専門企業は「機械学習」の領域への進出・開拓を果たしています。
例えば、ここ数年来、米Googleはロボット関連技術を持つ企業の買収を進めています。昨年末にも、Googleは、Boston Dynamicsという四足歩行ロボット作る軍事ロボット企業を買収しました。
<The NewYorkTimesの記事より>
http://www.nytimes.com/2013/12/14/technology/google-adds-to-its-menagerie-of-robots.html
自動走行や自動でブレーキを踏んでくれる自動車。よりユーザーの視点でお勧めをする広告。プロの棋士にも勝ってしまうコンピュータ将棋など、すでにわれわれの身近に機械学習を搭載した事例がありますが、今後さらに多くの事例が登場してくるのではないかと期待しています。
ビッグデータの可能性は、利用者側にかかっている
以上、大きく4つのトレンド予測(というか期待)を挙げてみました。
実際にこれらのトレンドがこの一年でどこまで普及するか、実用的になるかは、実際にわれわれ利用する側にかかっています。
ビッグデータには、まだまだ多様な可能性があります。これらを“過度な期待”で終わらせるか、“期待通り”にできるかは、携わる多くの人たちのこれからの努力にかかっています。
ぜひ、2014年は、ビッグデータマガジンの読者の皆さんも実際にビッグデータに触れ、さまざまな可能性を探求してみませんか?