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海外のビッグデータ活用事例 ~ビッグデータマガジン1周年企画~

time 2014/07/24

海外のビッグデータ活用事例  ~ビッグデータマガジン1周年企画~

ビッグデータ 海外活用事例

ビッグデータマガジンはこの2014年7月に1周年を迎えました。

そこで、今回は海外のビッグデータ活用事例をご紹介していきます。

 

■なぜ海外のビッグデータ活用事例を紹介するに至ったか、、、

ビッグデータマガジンは、この1年たくさんの事例やインタビュー記事などをご紹介してまいりました。そこで、この1年で「ビッグデータ」がどの程度普及してきたかを調べてみました。

Googleが提供するGoogleトレンド(https://www.google.co.jp/trends/)を用いて、「ビッグデータ」というキーワードの検索数推移を調べてみると、実はこの1年間、検索数が増えていないことがわかりました。

ビッグデータ海外事例

<Google トレンドで「ビッグデータ」を検索>http://goo.gl/bAVxv4

そこで、英語で「big data」を検索してみると、カタカナの「ビッグデータ」とは異なり、右肩上がりで検索数が増えていることが分かりました。

Googleトレンド 海外のビッグデータ活用事例

<Google トレンドで「big data」を検索したURL>http://goo.gl/61o6HZ

一体、日本と海外のどこに差があるのでしょうか。

「ビッグデータ」という言葉は確かに認知されつつあります。しかし、日々ビッグデータ活用事例が増えてきているというところまではまだ残念ながらたどり着いておらず、同じ事例がずっと語り継がれているような状況です。

では、海外にはどんな事例があるのでしょうか。

 

■インド版「マイナンバー」のUIDは4億人超のバイオメトリクスデータを取得

 

2013年、日本では国民一人一人に番号を割りあて、所得や納税、社会保障に関する個人情報をひとつのIDで管理できる「マイナンバー」関連法が可決されました。しかし、可決された後も、IDの不正取得による悪用への懸念などプライバシーの問題が議論され続けている状況です。

一方で、南アフリカやインドでは、国民IDの技術にバイオメトリクス(生体認証)を応用する取り組みが進められています。

例えば、インド国民ID制度であるインドUIDは、ランダムに発行されるIDに対して、顔と両手の指紋及び両目の虹彩を含むバイオメトリクス情報を紐付け、個人を認証できるようにしています。

この登録プロジェクトは、ヒンディー語で「基礎」を意味する「Aadhaar(アドハー)」という名称で呼ばれ、無料で登録できるようになっていることで、既に日本の総人口の3倍を超える4億人以上の登録が完了しており、今後納税や福祉、さらには銀行などの認証、携帯電話契約などまで幅広い活用が期待されています。

このように、国家レベルでデータ活用の基盤となるIDを整備し、認証基盤を民間の事業者が受け入れ、利用していけるようになれば、非常に高い利便性のもとに、行政サービスから民間サービスまで享受できるということになります。

最終的には、インドの全人口にあたる12億人が登録する基盤を目指しており、そうなると、全世界の人口の1/5の認証を可能とする基盤となります。

インド版「マイナンバー」UID

<UIDを運用するインド政府機関UIDAIのWebサイト>http://uidai.gov.in/

 

数字に強いとされているインド人がこの官民一体となった認証基盤をもちいて分析を行うことができれば、様々な示唆が得られるのでないでしょうか。非常に興味深い取り組みです。

 

■ドイツの「つながる工場」は、第4次産業革命(INDUSTRY 4.0)

 

次に、日本の十八番である製造業に目を向けてみましょう。

日本では、ビッグデータ以前からQC(Quality Control:品質管理)やカイゼン活動などを通して、工場の生産性工場や歩留まり率の向上を進めてきました。

さらには、ビッグデータ導入事例の代表格とも言える、コマツのKOMTRAXのような遠隔操作による稼働状況の把握、さらには、予防保全のソリューションなども多数展開されています。

 

ICT 分野の革新が我が国経済社会システムに及ぼす インパクトに係る調査研究

<ICT 分野の革新が我が国経済社会システムに及ぼすインパクトに係る調査研究>
(画像はクリックにて拡大表示されます)
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/linkdata/h25_04_houkoku.pdf

では、海外に目を向けるとどうでしょうか。

ドイツでは、現在のビッグデータを含む最先端のICTを活用した製造業における改革を「INDUSTRY 4.0=第4次産業革命」と名付け、「Smart Factory(スマート工場)」と呼ばれる概念を提唱しています。

機械化、電力化、自動化に続く第四の革命は、CPS(Cyber-Physical Systems)と呼ばれ、サイバー(ICT)と実世界の融合を意味するものです。このCPSにより、工場は工場以外のモバイルデバイス、物流、エネルギーなどの様々なものと双方向でデータ通信ができ、より自律的・協調的な活動を行うことが可能になります。

例えば、工場・流通を含む一連のサプライチェーンにおいて、突発的なトラブルによって発生したボトルネックの情報を、リアルタイムでプロセス全体に共有することができ、さらに、その情報を用いて、最適な生産速度に各工程が瞬時に切り替えていくことも可能になります。

また、工場はほぼ無人化され、生産ラインでは自律的なロボットが製造作業を行い、人は工場ではなく、例えば、自宅などの工場以外の場所で遠隔操作を行います。そうすることで、不足する工場労働者問題を解決に導いたり、人材が不足する過疎の街に低価格で工場を建設し、産業をおこしたりすることが可能になります。

INDUSTRY4.0の検討ワーキンググループには、BMWやBosh、Daimlerなどのドイツを代表する企業、研究機関、さらには大学や政府関係者も参画しており、200億円を超える年間予算のもと、研究が推進されています。

これが実現できれば、工場内のQCやカイゼンを超えた大きな成果を手に入れることが可能になるだけではなく、人材不足などの社会問題に対する一つの解決策を提示することにもなるでしょう。

 

■海外事例から分かること

 

どちらのプロジェクトも、非常に興味深い事例ではあるものの、実際には様々な課題をはらみながら進んでいる状況です。

UIDがインドの全国民に普及するには、BOP(base of the pyramid)と呼ばれる低所得者層への展開が不可欠ですが、なかなか進まないのが現状のようです。また、バイオメトリクス認証登録時の本人確認の精度がどこまで信頼できるか、システムが改ざんされるリスクはないか、などの課題も議論されています。

INDUSTRY4.0でも、高度に自律し協調するようなシステムをそもそも開発することは可能か、開発できたとしても、ネットワークに侵入され工場が悪意をもって操作されてしまわないか、などの課題が浮かび上がってきます。

それでも進んでいるのは、ビッグデータに対して迷いなく突き進む国家の姿勢と、強力な官民連携があるからではないでしょうか。

冒頭でも書いたとおり、日本の「ビッグデータ」は現在踊り場にあります。今後、この踊り場の状態が長く続くと、これまでに紹介した世界の国々に大きな溝をあけられてしまうことでしょう。

現在、官民連携での検討会やプロジェクトなども立ち上がりつつあります。それらが、様々な問題があることは理解した上で、問題を棚上げするのではなく、都度解決の方向性を検討していきながらも進んでいくことに期待します。

 


最後に、ビッグデータマガジンは、「いますぐわかる。ビジネスで使える。ビッグデータ活用バイブル」というコンセプトで、これまで、1年走り続けてきました。まだまだ、その役目は必要だと感じておりますし、これからはトップランナーだけでなく、裾野を拡げる活動も必要だと感じています。

皆様に、今後もご覧いただけるよう、ビッグデータマガジン編集メンバー一同、尽力してまいります。今後共何卒よろしくお願いいたします。


<執筆者情報>

ビッグデータマガジン編集長 高橋高橋 範光(たかはしのりみつ)

株式会社チェンジ 取締役
ビッグデータマガジン 編集長

大学・大学院で、経営工学や集団意思決定支援を専攻。

卒業後、大手外資系コンサルティングファームに入社。業務システム開発、Webシステム開発、マーケティングROI分析など多方面に渡るITコンサルティングに従事。

現在は、株式会社チェンジの取締役としてIT企業の人材育成に携わりつつ、データサイエンティスト育成事業や、データ解析コンサルティングを手掛ける。

    

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