2017/07/06

ビッグデータ業界のキーパーソンにお話をうかがう「ビッグデータマガジン・インタビュー」。
ビッグデータ分析に必要なプラットフォームの提供と、専任のコンサルタントによるデータ分析支援を行う「テクノスデータサイエンス・マーケティング株式会社」。今回は人工知能の技術を応用した新しい意思決定支援ツール『scorobo』について、開発責任者であり、データ解析分野において豊富な実績・ノウハウをお持ちの池田拓史執行役員にお話しをうかがってまいりました。
—御社についてご紹介いただけますか?
テクノスデータサイエンス・マーケティング株式会社は、関連会社である株式会社テクノスジャパンのITコンサルティングサービスの強みを活かしながら、データサイエンティストによるコンサルティングと、データ分析を支援するシステム開発が出来る企業として2013年10月に設立しました。
—今回ご紹介いただくscoroboについて教えてください。
『scorobo』は、Scoring‐Robot の略称で、人工知能の技術を応用して開発された意思決定を支援する新しいツールです。さまざまな領域での応用が考えられますが、現在scoroboブランドの第1弾としてお客さまに提供しているのが、マーケティング・オートメーション(Marketing-Automation。以下、MAと略)ツールの効果を最大限に発揮させる『scorobo for MA』です。
scorobo for MAは、金融工学やマーケティングサイエンス分野における豊富な実務応用実績を持つデータサイエンティストチームが、蓄積した解析ノウハウと市場ニーズを組み合わせて開発しています。人工知能により自動的に学習する仕組みを組み込んでいるだけでなく、それを誰でも使えるようにUIを充実させていることが特徴です。『scorobo for MA』を利用いただく方には、裏側の仕組みや統計知識は必要なく、数クリックのPC操作で、人工知能による意思決定支援が受けられます。
— MAツールとはなんですか?またMAツールにおけるscorobo for MAの役割について教えてください。
MAツールとは、顧客に関する情報をもとに、最適なコミュニケーションを自動化するツールです。たとえばWebマーケティングでは、見込み客にアプローチする際、自社の製品に興味を持ちそうなターゲットを絞り込んだ上で、そのターゲットに対して適切なタイミングで適切なアクションを行う必要があります。ターゲット(見込み客)ひとりひとりに何を行うべきかを人間が逐一判断していくのは限界があるため、MAツールがその判断を支援します。
判断の際に必要とされるのが、スコアと呼ばれる“項目の重みづけ”です。これまでスコアの設定は、ベテランのマーケティング責任者が経験と勘で設定してきました。もちろんその経験と勘も精度は高いのですが、判断の基準が属人的であることや、マーケティング施策の成否にムラがあることも否めません。
この属人性やムラをなるべく排除し、安定的に誰でも一定以上に精度が高い意思決定ができるようにならないか?という思いが『scorobo for MA』を開発する出発点でした。
本製品は、MAツールとのデータ連携が進めば、役職や会社情報といったプロフィール情報に、たとえば資料ダウンロードやセミナー参加、メール開封など複数の行動ログデータを掛け合わせた統計モデルでスコアを算出できるようになります。
MAツールやセールスフォース・オートメーション・ツール、またはテキストファイルから自動で情報を取得したのちに、ユーザーは対象を画面上で自由に選択し、実行ボタンを押下するだけで、あとは人工知能が自動的に学習を開始し、成約を獲得しやすい顧客を判別します。
— データが蓄積するほど精度が上がるとお聞きしたのですが、詳しく教えていただけますか?
scoroboはオンライン機械学習アルゴリズムを搭載しており、どういう人がどういうアクションを行ったら成約したかという実績データをもとにリアルタイムに学習し、意思決定の精度を上げていきます。データが蓄積するほどに意思決定の精度を上げることができるため、たとえば適切な見込み客にアプローチできる確率が高まり、マーケティング施策の成功率が上がります。
また、scoroboはデータの蓄積がまだない初期状態からでもお使いいただけるよう、顧客企業内のベテランに成約例を仮登録してもらい、それを学習させることによりスコア設定にある程度の精度を担保することができます。つまり、ベテランがいままで行ってきた暗黙的な判断法をいったん人工知能で学習・実装し、その後の実例を通じてさらに精度を上げていくことが可能になるのです。
—今後の展開を教えてください。
scoroboが適用できる範囲は多岐にわたると考えています。
たとえば、昨年よりIoTやウェアラブル製品が注目されていますが、それらから収集できる膨大なデータに対してscoroboの人工知能を応用すれば、何らかの法則性を抽出することができます。“膨大なだけ”のデータの中から、アクションにつながる有益な示唆を発見できるのです。そのため、たとえばヘルスケア分野でなら、遠隔地の高齢者の様子をリアルタイムに記録し、脈拍や行動量等の変化から、心筋梗塞など重篤な症状の発生を事前に予測することもできます。他にも精度の高い在庫管理や、機器故障の予兆検知なども精度を高めることができるでしょう。これらの応用例はこれまでにも事例がありますが、scoroboによって、導入のハードルが今までより格段に下がるのです。
ゆくゆくは、それらを業種・業態に特化したテンプレートとして整理することで、scoroboの導入初期からすぐに成果が出せるだけでなく、業種・業態特有の課題に対して“かゆいところに手が届く”ツールとして、差別化を図りたいと考えています。
— 読者のみなさまへメッセージをお願いします。

テクノスデータサイエンス・マーケティング株式会社
執行役員 池田拓史氏(左)
ビッグデータマガジン廣野(右)
ビッグデータ時代を迎え、人間が今まで気づくことができなかった事実や法則性が次々と解明され、ビジネスに応用されています。これらの発見と応用を支えるデータサイエンティストの人材不足が課題となっていますが、労働人口自体が減少していくことを考えると、人材が不足するのはデータサイエンティストだけではなく、国全体での課題と言えます。
そのような中、scoroboのような意思決定支援ツールを用いれば、ベテランに依存することなく進められる業務領域が広がり、人間が本来取り組むべき付加価値の高い業務に集中できるようになります。少ない人数でも、より質の高いサービスが提供できるようになる可能性が広がるわけで、その実現にscoroboがお役に立てるのではと感じております。
scorobo for MAは、scoroboブランドの第1弾としてマーケティング分野で提供をはじめましたが、異業種との協業も視野に入れながら、新たなる製品の開発を含め、データ経営を推進していく多くの企業をご支援したいと考えています。