2017/07/06

こんにちは、杉浦です。前2回は「AI×マーケティング」というテーマでしたが、今回は少しテーマを変えて、「大手リテーラー(小売業)×ビッグデータ活用」にしてみました。2010年には単なるバズワード(流行)だった「ビッグデータ」も、そろそろ地に足がついてきたという感じがします。
<はじめに>
今回は大手リテーラーの事例を探して、ダイレクトマーケティング・カンパニーの株式会社フュージョンにお邪魔しました。解説いただいたのは社長の佐々木さんです。
フュージョンは、企業と顧客の間の距離を縮める為に「マーケティングデータ分析」「マーケティングシステム構築・運用」「ダイレクトプロモーション」の3つのサービスをワンストップで提供し、国内有数のリテーラーを顧客に持つダイレクトマーケティングエージェンシーです。
もくじ
<① 大手リテーラーのビッグデータ活用状況>
佐々木さんによると、2014年10月ころは下記のコラムにあるように「システム導入のための情報収集」のための相談が多かったそうです。

2014年10月の佐々木さんコラム「今更聞けない!?最近DMPの話が多いです。」 https://www.fusion.co.jp/blog/2014/10/dmpdata-management-platform/
現在は
- ビッグデータを格納・管理するためのシステム導入(DMPなど)
- 分析するためのシステム導入(BIツールなど)
- 活用するためのシステム導入(MAなど)
- データの名寄せやクレンジングといった分析準備
が終わりつつあり、”実務で分析を活用する”フェーズだそうです。
ビッグデータ分析を経営に活かすためには、システムを構築してデータを収集するだけでなく、どう分析してどのように実際の業務フローに適用するか?という、データ活用企画とその実行が必要です。
喫緊の課題は、データ活用企画力と運用力をもつ「人材」が不足していることだそうです。
【追記:2017年2月14日 12:24】
そのため、大手リテーラーでは、ビッグデータ利活用企画に知恵を絞り、試行錯誤に付き合ってくれる運用パートナーを探しているらしいのです。これまでは“システムベンダー”を探していて、いまは“運用ベンダー”を探しているということです。主要なシステムには必要な機能が概ねそろっているため、どのシステムを選ぶか?ではなく、どう活用するか?が今後の成否を分けると考えているようです。
(参考:大手リテーラーが採用している主なシステムベンダーとサービス名)
①ブレインパッド Rトースター
http://www.rtoaster.com/
②トレジャーデータ
https://www.treasuredata.com/jp/
③アルベルト smarticA!
https://smartica-dmp.com/
①マルケト
https://jp.marketo.com/
②エクスぺリアン(CCMP)
https://www.marketinggate.jp/ccmp/index.html
③オラクルエロクア
https://www.oracle.com/jp/marketingcloud/products/marketing-automation/index.html?sckw=omc-jp-ps2015
<② 小売業におけるビッグデータ活用方法ご紹介>
英国大手リテーラーのテスコが言い始めた概念に「商品DNA」というものがあります。従来は商品を属性により分類して棚割をしていました。また消費者についても年齢や性別などの属性で分類して販促施策を検討していました。
「商品DNA」とは、購買データなどから商品に対してタグ付けをしたものです。購買データ(消費行動)から導き出された「成分」とも言えます。そのタグから商品が買われるコンテキスト(文脈)を導き出して販促アクションを企画するのだそうです。
商品に対するタグ(DNA)の付与は、AI(人工知能)による画像の理解に似ていますね。
(参照:https://bdm.dga.co.jp/?p=4275)
商品DNAは、顧客のライフスタイルを理解したり、商品をレコメンドしたり(パーソナライズされたクーポンの発行など)するために使われています。
<③ 国内リテーラーでの「商品DNA」活用事例>
生鮮食品の定期購買を勧めている大手リテーラーのケースです。目標は定期購買会員の継続率UPでした。商品DNAによる分析を行ったところ、特定の数アイテムを一定の期間内に購買しているか?否か?が分かれ目ということが分かりました。
そこで、入会初期の販促ツール改良や営業・クーポンなどによるレコメンド対象商品の改善などを徹底して、継続率の大幅な改善ができたそうです。
<④ 最後に>
大手リテーラーにおける「ビッグデータ活用」の位置づけは、“勉強しなくちゃ”とか“何か考えなくちゃ”といった気軽なものではなく、本気で取り組まねばならない重点戦略ポイントになりつつあるようです。システムが対応していないとかデータが不足しているといったフェーズも過ぎて、人材不足を嘆く声が頻繁に聞かれるようになりました。
私は、核となる業務領域ほど、活用企画もデータ分析運用も外注ではなく自社人材による実施にむかうと思います。ということで、今後はますます採用や教育、組織づくりが重要になっていく気がしています。
<⑤ 協力者ご紹介>

フュージョン株式会社代表取締役社長 佐々木卓也
https://www.fusion.co.jp/blog/
2000年にマーケティング会社であるフュージョン株式会社に入社。現在代表取締役社長。小売業・メーカーにおけるCRM支援やID付POSデータ分析システムの提供と活用支援等、幅広い知見で顧客との距離を縮めるサポートを行っている。米国DMA公認ダイレクトマーケティングプロフェッショナル。
【追記:2017年2月14日】文章訂正並びに一部追記いたしました。
【執筆者情報】
杉浦 治(すぎうらおさむ)
株式会社 学びラボ 代表取締役
一般財団法人ネットショップ能力認定機構 理事
株式会社 AppGT 顧問
2002年デジタルハリウッド株式会社取締役に就任。IT業界における経営スペシャリスト育成やネット事業者向け研修開発を行う。
2010年4月「ネットショップ能力認定機構」設立。ネットショップ運営能力を測る「ネットショップ検定」を主催。
2013年7月、プレステージ・インターナショナル(東証一部)より出資を受けて(株)AppGTを設立。コンタクトセンターに蓄積された顧客コミュニ ケーションデータを分析し、今後の主要な顧客接点となるスマートフォンの活用において、様々な研究や企画提案を行っている。