2017/07/06

ビッグデータ業界のキーパーソンにお話をうかがう「ビッグデータマガジン・インタビュー」。
今回は、「Pentaho」日本正規代理店KSKアナリティクスの森本好映代表取締役と中山久司さまにお話をうかがいました。「Pentaho」は、レポーティング、インタラクティブ(対話型)分析、ダッシュボード、データ統合/ETL(Extract/Transform/Load)、データマイニングといった機能を含む、オープンソースの代表的なBI(Business Intelligence)ツールです。
―――まずは自己紹介をお願いします。
森本 好映さま(代表取締役)
KSKアナリティクスを創業し、今年で7年目です。以前はシステムインテグレーションを行う企業でビジネスコンサルタントとして勤務していました。その後、思うところがあって中小企業診断士の資格を取り、MBAも取得してコンサルティング業を始めたのですが、ビジネスにはデータ分析が欠かせないと考え、世界中のBIツールを探し始めたのです。
Pentahoと出会ったのは2005年です。オープンソースという点にも惹かれましたが、それ以上に、Pentaho社の創業者やエンジニアといった“人”に魅力を感じて2007年にパートナー契約をしました。
中山 久司さま(営業本部プリセールスG グループリーダー)
大学を卒業後、DEC(現HP)にエンジニアとして就職しました。その後Informix(後にIBMにより買収)というデータベース管理システム(RDBMS)の会社で働いたりと、データベースエンジニアとして関わってきました。長年この業界の中にいて変化を感じていくうちにBIに着目するようになりまして、インフラ関連のインプリメンテーションからBI業界に転身し、そこではプロダクトマーケティングを行っておりました。
2005年頃、当時Pentahoはまだ出たばかりだったのですが、オープンソースゆえのグローバルなユーザーコミュニティーが広がっており、非常に勢いを感じました。そのようなことからもPentahoをウオッチしていたのですが、日本企業がBIを活用するには、やはりPentahoが最適と考え、2010年にKSKアナリティクスに入社し現在はプリセールスを担当しています。
このような経緯で、私自身が心の底からPentahoに惚れ込んでいます。お客さまの情報活用のためには、Pentahoほどよいものはないと自信をもっております。
―――御社の事業について簡単に教えていただけますか?
2006年に会社を設立して以来、オープンソースを中心としたデータ分析・情報活用のソフトウエアの販売、サポート、ローカライズ、トレーニングを行っております。
また、Pentahoに関するサービスだけではなく、Pentahoを補完する統計やデータベース、予実管理などのオープンソースを組み合わせた分析ソリューションも提供しております。

Cloudera World Tokyo(2013年11月7日開催)
<沿革>
2006年8月 大阪市にて会社設立
2007年10月 米国Pentaho社とのパートナー契約を締結、サービスを開始
2008年1月 東京オフィスを開設
2010年6月 カナダInfobright社とのパートナー契約を締結、サービスを開始
2011年1月 Pentaho Global Partner Award 2011を受賞
2011年4月 ドイツRapid-I社とのパートナー契約を締結、サービスを開始
2011年9月 アジア地域初のPentahoプラチナリセラーに昇格
2012年2月 ドイツJedox社とパートナー契約を締結、サービスを開始
2012年2月 RapidMiner日本語版 V5.2をリリース
2012年6月 社名を株式会社KSKアナリティクスに変更
2013年10月 Pentaho Partner of the Year 2013を受賞
(参照 http://ksk-anl.com/company/history)
―――Pentahoについてもう少し詳しく教えてください。
「Pentaho」は、データ統合/ETLやレポーティング機能、アナリティクス、ダッシュボード、データマイニング等のそれぞれ独立したオープンソースをまとめたBIスイートです。
コミュニティー版は、無償かつユーザー数無制限で利用できます。
また、エンタープライズ版は、有償での導入コンサルティングやカスタマイズ、サポートを受けることができます。日本では正規代理店である当社のみがこれを提供しています。コミュニティー版を試用したうえで、エンタープライズ版へ移行することも可能です。
有償版でもユーザー数に制限がないことが大きな特徴でして、業務に関わる人数が多い場合の費用対効果が非常に良くなります。使用することができる人数を限定することなく、関係するすべてのメンバーがPentahoを使用して情報を共有することができるのです。
従来のBIツールでは、多くのメンバーはレポーティングによる分析結果の共有のみ、というケースが多かったのですが、Pentahoを用いれば、すべてのメンバーが自分の見たい視点からデータ分析を行うことが可能になるのです。
―――Pentahoをすでに導入されている企業はどのように活用されているのでしょうか?
Pentahoは柔軟性が高く、拡張性もあるため、業種業態関係なく、導入いただいております。
詳細はこちらからご確認ください。
(KSKアナリティクス 取引先一覧http://ksk-anl.com/company)
さまざまな企業で活用されているPentahoですが、導入の目的は大きくわけて3つあります。
1)従来から行われていたデータ分析用のBIツールとして
2)社外に提供するクラウドサービスを構築するためのプラットフォームとして
3)ビッグデータを活用(または活用の検討を)するためのツールとして
1) 従来から行われていたデータ分析用のBIツールとして
従来からあるBIツールの更新という感じですので、データ分析というよりもレポーティング中心の使い方ですね。ただ、将来やりたいことが新たに起こった場合の柔軟性や中長期的な費用を考え、オープンソースを希望される企業も多いのです。
Pentahoは段階的な導入が可能なため、レガシーシステムからの移行も柔軟に行えます。
たとえば、PentahoではないBIツールを利用されていた企業(従業員数 約3000人)がリプレイス行うこととなり、Pentahoを選択されたケースがあります。新規にシステム構築する場合とは異なり、新規にPentahoを導入してもライセンスを購入する費用がなくコストは保守費用のみでよいため、毎月の総コストをほとんど増やすことなくリプレイスを行うことができました。
また、既存BIを並行稼働させながら、重要度や利用シーンに応じて段階的に移行することもできたため、移行に伴って業務が止まることもありませんでした。
2) 社外に提供するクラウドサービスを構築するためのプラットフォームとして
Pentahoはユーザー数無制限かつ導入する企業のプラットフォームに依存しないため、自社サービスの構築プラットフォームとして活用されることも多いです。自社サービスのユーザーを増やしていったとしても、ユーザー数に比例したコストが必要になるということがありません。価値あるデータを提供している企業が、そのデータに分析機能を付加したWebサービスを提供することなどが可能です。
ある調査会社はPOSデータをセグメントごとに分析してレポート納品していたのですが、Pentahoを採用してデータ付き分析Webサービスをオプションとして提供したところ、このオプション契約が好調に推移しているそうです。分析結果レポートを書面やPDFで受け取っても、そこからの加工が行えないため、分析結果情報は受け取ったものの、それ以上の示唆を自分で探すことができなかったのです。しかし、Pentahoを用いた新サービスでは、納品されたレポートには報告されていなかった「10代から20代男性のデータを住所別で見たい」などの追加条件による分析が、ユーザー自身で行えます。このオプション利用はユーザー数が増えても、ライセンス料などのコストが増えないことがPentahoの特徴です。
3) ビッグデータを活用(または活用の検討を)するためのツールとして
「社内にあるビッグデータをどう活用すべきかをPentahoを用いて検討したい」といったご要望など、ビッグデータ活用のための導入検討が最近増えてきています。ライセンスを購入する必要がないことから、ビッグデータ活用という新しい取り組みに対して、費用面でスモールスタートできるためPentahoはお勧めです。
また、Pentahoはデータ統合がセキュアかつGUI画面で行え、また幅広い接続先をサポートしていることから、多様なデータを取り扱うビッグデータ分析に適しているといえます。
当然ながら、他のオープンソースとの相性が良く、Hadoopには2008年から対応していますが、Hadoopを使ってストレージを構築し、大量に蓄積したデータをビジュアライズするといった目的での活用ケースも多いです。PentahoはNoSQLを含む幅広いビッグデータ環境をサポートしています。
また、大手通信会社さまでは、自社のデータ分析をしてユーザーの通信品質を上げるために活用されているようです。通信ログなどあらゆるデータを集めて、分析・ビジュアライズしたり、通信機器の故障予測などにも活用されています。
―――ユーザー企業や御社での、人材の課題について教えてください。
データサイエンティストだとか、データアナリストとよばれる人材が注目されていますが、統計も、ビジネスも、テクノロジーもわかる人は当然少ないです。しかし、全員がそのようなスーパーマンにならなくてもよいと思っています。
一方で、多くの日本のビジネスパーソンがデータ分析の力を手に入れたら、会社全体としての底上げができるとも思っています。特に経営企画の人は、エクセルを使いこなしている方が多い一方で、Rやコマンドベースの分析ツールを扱える人が少ないと思います。現段階では、コマンドベースの分析ツールを使えると非常に仕事がやりやすくなるのでは?と思います。まずは苦手意識を持たずに、それらにふれる機会を持ってもらいたいです。
ただし、私たちツールを提供する側としては、GUIをより充実させるなど、10年後は現在のエクセル感覚で、裏側を意識することなく統計ができる環境を提供していきたいです。
Pentahoの資格試験もすでにあるので、多くの人にPentahoを活用できるようになってもらいたいと思っています。
あと、他社事例を気にしないでほしいと思っています。「なにができるのか?」ではなく、「なにをしたいのか?」ということをまず考えていただきたいということです。
「○○をしたいから、こういうことはできないのか?」とか、「こうやってみたがうまくいかなかった」という状況から、いろいろ検討していただきたいです。
オープンソースの活用がどんどん広がっていますので、弊社ではこの動きを加速させるため、「Octaba(http://ksk-anl.com/solutions)」という、優れたオープンソースをパッケージ化したソリューションを提供しています。また、大学等研究機関と連携してオープンソースを集めたアナリティクスのツール開発も行っております。今後も様々な活動を通じて、新しいものを取り入れようとされる際のハードルを下げていきたいと思っています。
学生や就職活動中の方などは、どんどん新しいものにチャレンジしてもらいたいですね。例えば、NoSQLはRDBとは違って新しい技術のため、先輩のいない分野です。その分、自由にできますし、新しいものを創っていけると思うのです。私たちも若い人と一緒に新しいものを創っていきたいと考えています。
――― 最後に、ビッグデータマガジンの読者むけにメッセージをいただけますか。
森本 好映さま(代表取締役)
最近は「ビッグデータ」という言葉が着目されていますが、「ビッグデータ」というキーワード自体が聞かれなくなったとしても、アナリティクスという考え方や、分析業務の必要性がなくなる事はないと思います。データの大小や多様性などに関係なく、データを分析して経営に活用するということは間違いなく今後の経営に必要ですし、重視されていくというトレンドです。英語やファイナンスに関する知識が必要とされるように、データ分析力はビジネスパーソンにとって必須のスキルとなっていきます。
ぜひ、今後もアナリティクスに関する情報はウオッチし続けてほしいです。
中山 久司さま
Pentahoに限らず、テクノロジーやインフラなど、オープンなものがたくさん誕生しています。無償で公開されているので、ぜひ実際にさわってみてください。我々も、使いやすい仕組みを提供していきます。
例えば、データ量は少なくて良いので、手元にあるエクセルデータを何かのビッグデータ分析ツールに流し込んでみたりするなど、とにかくまず始めてもらいたいです。
【インタビュアー】
杉浦 治(すぎうら・おさむ)
株式会社 AppGT 取締役
株式会社 学びラボ 代表取締役
一般財団法人ネットショップ能力認定機構 理事
2002年デジタルハリウッド株式会社取締役に就任。IT業界における経営スペシャリスト育成やネット事業者向け研修開発を行う。
2010年4月「ネットショップ能力認定機構」設立。ネットショップ運営能力を測る「ネットショップ検定」を主催。
2013年7月、プレステージ・インターナショナル(東証一部)より出資を受けて(株)AppGTを設立。コンタクトセンターに蓄積された顧客コミュニ ケーションデータを分析し、今後の主要な顧客接点となるスマートフォンの活用において、様々な研究や企画提案を行っている。
~ビッグデータ活用のための「やさしい業界解説」シリーズ ~
【エディター】
土本 寛子(つちもと ひろこ)
ビッグデータマガジン管理者
【経歴】モノづくりに興味を抱き、製造業向けシステム開発プログラマー、SE、業務およびシステム導入コンサルタントとして従事。また、ナレッジマネジメントやWebデザイン開発などにも関与。
~株式会社チェンジでは、「ビッグデータ無料勉強会」のほか、「データサイエンティスト養成コース(5日間)」を開催しております。お気軽にお問い合わせください。~