2017/07/06

ビッグデータマガジン 小暮です。
ビッグデータに関わるソリューションや人物のお話を伺う「ビッグデータマガジン・インタビュー」。今回も引き続き株式会社ハレックス(以下、ハレックス)の代表取締役社長である越智 正昭氏のインタビューをお送りいたします。
—今後の気象情報ビジネスにおける見通しについてお伺いできますでしょうか。
気象庁から提供される様々な気象ビッグデータを扱うことができ、気象や防災のエキスパート人材を抱える私たちのような民間気象情報会社は、様々なソリューションを幅広く提供でき、気象情報ビジネス市場そのものもより拡大していけると考えています。

図1:気象情報ビジネスのマーケット(ハレックス様ご提供資料より)
ただ、私たちのような民間気象情報会社は、気象ビッグデータの処理や、気象予報業務を通じて蓄積した運用ノウハウは持っていますが、お客様の詳細な業務内容や抱える課題に関して十分に把握できていません。
だからこそ、今後はさらに、お客様の業務や課題を熟知するシステム会社と連携することで、気象情報を活用したソリューションを実現していきたいと考えています。
— 具体的には気象情報をどのように活用できるでしょうか。
例えば、これまでご紹介したような鉄道・道路向けの運行・保守業務や、海運・港湾業界向けの運航業務、さらには、流通業界における各店舗での仕入業務や、建設業界における各工事現場での工事可否や人材・機材の確保等を決定する際などにおいて、気象情報はきわめて重要な情報になります。
また、海底油田等の資源探査船向けに海潮流情報を提供されていますし、風力発電施設を建設するにあたって行う調査等でも気象情報が活用されます。
— 気象情報の活用分野は大変幅広いですね。膨大で多様な気象ビッグデータを最大限活用するために必要なことは何でしょうか。
これまでは、気象情報を扱う担当者が情報を目で見て判断して、人が行動していました。しかしそれでは担当者によって解釈も異なりますし、意思決定に資する情報の見落としや、見立てた予測の空振りになってしまいかねません。
膨大で多様な気象ビッグデータを最大限に活用するためには、マンパワーを主体とした仕組みではなく、気象や防災のエキスパートである気象予報士の知見を、お客様の業務システムの中に組み込んで自動化することで見落としを防止することが必要です。
私たちのような民間気象情報会社が日本において求められていることは、単なる情報提供ではなく、お客様の意思決定に資する気象のインテリジェンスを提供することであり、お客様の課題を解決するためのソリューションを提供することです。
— 気象予報士が求められる役割も変わってくるのでしょうか。
これまで気象予報士が得意としてきた領域は、直近数時間における短時間予報や、当日~向こう一週間程度の短期予報で、予報士のリソースもそこに投入されていました。
今後はビッグデータの活用で、いままでマンパワーをかけていた直近の気象現象の予測業務をコンピュータが主体となって行うことで、ヒューマンエラーなどの見逃しを防止することができるようになります。
そして、気象予報士はより付加価値の高い中長期の気候予測や、気象情報を必要とするお客様に対して付加価値が高いサービスを提供できるようになります。
今後、気象のエキスパート人材が利用者から求められるスキルは、利用者視点で気象情報を捉え、その活用の仕組みを提案できるコンサルティング能力であり、利用者に適切な形で情報を加工できる仕組みを構築できることだと考えています。
例えば農業では、これまで属人的な経験や知見に頼っていた日常管理や農業経営が行われてきましたが、過去の気象観測データや気象予報データ、地域特性に関するデータを活用することで、より定量的に農業を管理できるようになると期待しています。
今後、気象予報士に求められている資質は、利用者のニーズを踏まえて気象ビッグデータを分析してインテリジェンスを提供できる「気象のデータ・サイエンティスト」としての資質であり、気象予報士がそのようなスキルを身につけることで民間気象情報ビジネスが拡大していくのではないかと期待しています。
— この度は、大変貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。
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株式会社ハレックス 代表取締役社長 越智 正昭氏 ~ビッグデータマガジン・インタビュー~
執筆者情報
小暮 昌史(こぐれ まさし)
所属:人材開発サービス事業部
【経歴】大学院博士課程(専攻は火山学)中退後、2007年に株式会社チェンジ入社。内部統制支援、システム移行支援、海外進出支援コンサルティング業務に従事。