2017/07/06

今回は、ナビタイムジャパンさまが保有するデータの1つ「インバウンドGPSデータ」について、株式会社ナビタイムジャパン 交通コンサルティング事業部 野津 直樹さまにおはなしをうかがいました。
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—ナビタイムさまのアプリはよく使っているのですが、日本人向けですよね?
訪日外国人データがどうやってとれているのか、詳しく教えていただけますか?
我々は、通常みなさまにご利用いただいている「NAVITIME」「乗換NAVITIME」といった経路検索サービス以外にも、訪日外国人の方が英語・中国語(繁体字・簡体字)・韓国語の4ヶ国語で乗換検索や無料Wi-Fiスポット検索などができる「NAVITIME for Japan Travel」という外国人向け観光案内アプリを提供しています。
今回ご紹介する「インバウンドGPSデータ」は、その「NAVITIME for Japan Travel」から取得したデータです。そのデータの一部は、「地域経済分析システムRESAS(https://resas.go.jp/)」にも掲載されていて、みなさまにも無料でご覧いただけるようになっています。
—無料で使えるというのはうれしいですね。その「インバウンドGPSデータ」を使うと、訪日外国人観光客がどこに出かけているかわかるということでしょうか?
はい、日本に来てどこを訪問したかわかるようになっています。またそれだけでなく、アプリを利用する際に回答いただいたアンケートを用いることで、どの国から来た方かわかるようになっています。
—外国人観光客の動向は最近注目を集めているテーマですね。では、実際にデータを分析してみて、明らかになった事例があれば教えていただけますか?
たとえば、京都は外国人観光客に人気ですが、その中でも人気のスポットの1つが伏見稲荷大社です。そこで、伏見稲荷大社にくる外国人観光客の行動を「インバウンドGPSデータ」を使って分析してみると、入り口付近で有名な千本鳥居辺りにはアジア圏からの観光客が多く、散策すると30分から1時間近くかかる稲荷山の上のほうを分析して見ると、アジア圏の人はかなり減り、代わって散歩を楽しむ傾向の強い欧米からの観光客が多く訪れていることがわかりました。
実際に、伏見稲荷大社まで行くとわかるのですが、アジア圏の方々は入口付近で記念写真を撮影して、山には登らず、次のスポットへ移動されている光景をよく目にします。
このように、ひとくちに「訪日外国人観光客」と言っても、それぞれに訴求するポイントが異なるため、データを活用してターゲットに応じた施策を検討することが有効です。
また、人の流れを時間帯別に比較したり、地図に重ね合わせたりすることでわかることもあります。
一例をあげると、奈良県内の滞在者数を時間帯別に集計してみた結果、日中は人が多いものの、夕方以降になると急激に落ち込んでいることがわかります。逆に、大阪は夜に人が増え、深夜まで活動していることがわかります。これらのデータから、昼に奈良を訪れた外国人観光客が、夜になると大阪や京都に移動してしまっているということがわかります。
元々、奈良県には宿泊できる施設の数が少ないことがわかっていたのですが、実は奈良県内で夕食も摂っていないこともわかりました。
—確かに時間帯まで分析できれば、何をしているかも見えてくるので、課題抽出や対策検討に有効ですね。他にも有効なデータ活用事例はありますか?
ピンポイントの滞在情報の地図上へのマッピングや時間帯別の分布以外では、訪日外国人観光客の観光ルートを把握するために、回遊マトリックスという分析を行っています。
たとえば、北海道に来る外国人観光客の2/3は、他県に回遊せず、北海道にとどまっていることがわかります。これは、他県への交通手段が限られ、時間もかかるという交通上の原因もあげられますが、中には、スキーのために来ているので北海道以外に興味が無いという方もいらっしゃるかもしれません。
そこで、このような方に観光の機会を増やしてもらうには、北海道内での回遊を提案することも有効ですし、スキーであれば北海道以外のスポットを紹介することも有効でしょう。
スポットや時間、地図へのマッピング、回遊などさまざまな観点で分析することで、多くの課題や対策に繋がるヒントを得ることができます。
—非常に分かりやすい事例、ありがとうございます。最後に、御社では、これらのビッグデータをどのように展開していく予定ですか?
ナビタイムジャパンでは、「NAVITIME」「乗換NAVITIME」を中心にコンシューマー向けにサービスを展開していますが、得られたデータを活用し、さらなる利便性向上をめざしてサービスをブラッシュアップしています。
また、自治体や観光・商業施設等向けにデータを用いた調査業務を実施しており、交通計画やマーケティングにも活用されています。
従来の交通系のデータは、駅と駅の間や、高速道路の利用状況など、限られた区間の分析にとどまることが多かったようです。しかしナビタイムジャパンの提供するビッグデータは、さまざまなコンシューマアプリから得られる知見を組合せ、移動の全体像を把握できる点が特徴です。
今後は、これらの蓄積されたデータをもとに、世の中の移動全体を最適化するためのさまざまな取り組みを各企業や自治体と連携しながら行っていきます。
インタビュー後記
最近は、ビッグデータ活用の事例も増えてきており、その中には各社独自に分析している事例も増えてきています。
実際に分析を進めるには、データを集めると同時に何を知りたいかを明確にしたうえで、自社にあるデータ、取得可能なデータ、また、不足しているデータが何なのかを追求していく必要があります。
今回お話をうかがったナビタイムさまの場合は、自社のサービスやソリューションから蓄積されたデータを有効活用し、自社サービスの改善やコンサルティングに活用されていました。
一方で、ナビタイムさまのようなデータを持っていない企業も多くあるでしょう。
そのようなときには、データを持っている企業と連携する有効性を感じました。
(土本寛子)
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