2017/07/06

こんにちは。デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社(DAC)ビッグデータ解析部の漆畑と申します。ビッグデータ活用の取り組みがさまざまな業界で行われるようになってきたわけですが、広告業界も例外ではありません。本連載を通じて、私たちがいかにしてビッグデータの活用に取り組んできたのかご紹介していきたいと思います。
■ビッグデータはもはやバズワードではない
ビッグデータという言葉の初出は2010年のエコノミスト紙と言われており、今年でこの言葉がバズワードとして世に出てから5年目ということになります。
2014年のビッグデータ関連市場は444億円で、今後2019年には1,469億円と予想されており、年間成長率27%という発展期にあります。このことからビッグデータという言葉は、もはやバズワードではなく世の中に定着してきたと考えます。
(参考) https://bdm.dga.co.jp/?p=2437
2015年2月19日ビッグデータマガジン解説
(出典) http://www.idcjapan.co.jp/Press/Current/20150521Apr.html
2015年5月21日 IDC Japan株式会社
■ビッグデータを活用する業界の広がり
この間、ビッグデータ活用の取り組みを行う業界は増えており、当然のことながら広告業界でもインターネット広告を中心にビッグデータの活用が議論されるようになりました。
■インターネット広告業界に起こった変化
2010年頃、インターネット広告業界にリアルタイムに入札/応札を行うRTBという仕組みが出現しました。
RTBはSSP(*1)という広告の売り手側(媒体社)のプラットフォームから「いまスポーツ記事の掲載面に、あるユーザーがアクセスしました。このユーザーに対していくらで広告を入札しますか?」と広告の買い手側(広告主)のプラットフォームであるDSP(*2)に問い合わせをします。これをビッドリクエストと呼び、SSPは複数のDSPに同時に行います。この問い合わせに対して、DSPはビッドリクエストに含まれる情報(*3)をもとに、「買う/買わない」の判断を行います。買う場合は入札金額をSSPに伝えます。複数のDSPより伝えられた入札金額でオークションを行い、落札したDSPの広告が表示されるという仕組みです。
この仕組みはインプレッション(*4)単位で広告を買うことになるので、広告枠情報のみだけではなく、広告を見るユーザーの情報も加えて適正な価格で「買う/買わない」の判断を行います。また媒体社にとっても、最低入札金額等の条件を広告枠情報のみで決めるのではなく広告を見るユーザーの情報も加えて設定することで、インプレッション単位で価格を最適化することが可能になります。
このような背景により広告を見るユーザーは誰なのかが重視されるようになりました。
*1 SSP (Supply Side Platform) 広告の売り手の収益を最大化するプラットフォーム RTBへの参加もこれを通して行われる。
*2 DSP (Demand Side Platform) 広告の買い手がRTBに参加するためのプラットフォーム。
*3 ビッドリクエストには「クッキー(*5)/ページコンテンツ分類/広告サイズ/最低入札価格」等の広告枠情報が含まれている。
*4 インプレッション サイトに訪問者がアクセスしたときに広告が1回表示されること。
*5 クッキー webサーバーがhtml等をブラウザに送る時にブラウザに保存されるファイル。
(参考) DSP/RTBオーディエンスターゲティング入門 ビッグデータ時代に実現する「枠」から「人」への広告革命 (Next Publishing) オンデマンド (ペーパーバック)
– 2012/5/25
横山 隆治 (著), 菅原 健一 (著), 楳田 良輝 (著)
■広告を見るのは誰なのか?
広告を見るのは誰なのか?という問いについては、オーディエンスデータ(*6)を収集/蓄積するデータ・マネジメント・プラットフォーム(DMP)の登場により、解決に向けて大きく進展しました。
私たちは収集/蓄積されたオーディエンスデータを多面的に分析することにより、ユーザーを理解することができるのではないかと考えました。
例えばあるユーザーのweb行動データが以下のようであったとします。
(1)昼の12時~13時の間でweb閲覧数が増加
(2)19時以降はまったく閲覧がなくなる
(3)都内グルメサイト、表計算ソフトのノウハウサイト、女性向けファッションサイト、美容情報サイトの閲覧履歴がある
まず (1)はランチタイムと考えられ、(2)はユーザーが会社のPCからアクセスしており、退社したものと推測されます。さらに(3) で表計算ソフトのノウハウサイトを閲覧していたことと併せると、どうやら仕事はデスクワークが中心ではないかと考えることができます。また、都内グルメサイトを閲覧していたことから都内近郊に勤務、女性向けファッションサイトと美容情報サイトの閲覧から女性ではないかと推測されます。
このようにユーザーの行動をみていくことで理解を深めることができます。
*6 オーディエンスデータ 「クッキーAは何時にどのようなwebサイトに訪問をしている」という様な個人情報を含まないweb行動データ。
■広告への活用のために
前述の例の場合、「都内近郊で勤務している女性の可能性が高い」という推測に至りましたが、広告の目的によって広告主が知りたいユーザーの情報はさまざまです。私たちはそれを以下のように整理しました。
①基礎属性/趣味/嗜好
- ブランド認知を目的とする広告主は「20代後半~30代前半の女性で旅行好き」、「30代以上男性で車好き」というようなターゲットをあらかじめ想定しています。ターゲット定義は基礎属性/趣味/嗜好で定義されることが多いため、ユーザーのそれらを知る必要があります。
②購買に至る可能性
- 商品購入などのコンバージョンを目的とした広告主は、獲得効率を重視します。そのために、広告を見るユーザーがその商品に興味を持ち購買に至る可能性が高いかどうかを知る必要があります。
③購買ステージ
- 一般的に、認知から購買までのユーザーの商品に対する態度として「理解/関心/検討」のようなステージユーザーがあります。ステージごとにユーザーの態度変容を促すためにユーザーの購買ステージを知る必要があります。
上記で整理した内容に沿って、次回以降、私たちが取り組んだ事例をご紹介していきたいと思います。
【執筆企業情報】
デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社(DAC) https://www.dac.co.jp/
DACビッグデータ解析部は、データサイエンティストやエンジニアなど多様なバックグラウンドを持つ、データ解析のプロフェッショナルチームです。「ビッグデータを基盤に、広告主・媒体社と生活者のコミュニケーションを豊かにする」をミッションに掲げ、日々取り組んでおります。